Degasの与信判断は、各農家と農地のデータを機械学習で解析して算出した収穫量予測、過去の返済率などの定量面に加え、農家の営農指導セミナーへの出席率や、農地の種まきの間隔を現地スタッフがスコアリングするなどの完全な独自データも踏まえて行う。こうしたテクノロジーを確立することによって、この先融資先が1000万軒になったとしても問題なくオペレーションできるようにしている。
「多くの国際機関のプロジェクトは2~3年で終了してしまいますが、当社のような民間企業であれば、与信の積み上げと融資の拡大、テクノロジーの活用によって、継続的に農家の所得を上げるお手伝いができる。また、たとえば子どもの養育費など、何かに困って返済できない農家がでてきたときに、各農家のデータを持つ我々が多少それを補填するなど、すぐに判断してアクションを取れることも強みです」
脱炭素事業にも進出
今年1月には総額約10億円の資金調達を実施し、脱炭素事業にも進出した。リジェネラティブ農業(環境再生型農業)を通じた二酸化炭素の隔離、およびそれに伴う質の高いカーボンクレジットの創出を行う事業だ。発端は、収穫物の販売先である世界最大手の食品メーカーから打診があったこと。現在は同社とともに、アフリカで最大規模のPoC(概念実証)を推進している。
「リジェネラティブ農業は農家にとってもメリットが大きく、肥料量の直接的な削減や質の高いカーボンクレジットの発行のほか、生産した農作物を通常よりも高く仕入れてもらうことにもつながります。現在は融資先農家の3%ほどをリジェネラティブ農業へ移行しています。今後はこの比率を指数関数的に高めていきたいと考えています」
脱炭素分野では、アフリカだけでなく日本にも目を向けている。今年7月、「このままでは、日本企業が世界から取り残される」という危機感から、JAHQCC(Japan Alliance for High Quality Carbon Credit)を設立した。創立メンバーに味の素やJT、三菱UFJ銀行といった大企業を迎え、質の高いカーボンクレジットの創出に関する世界最先端の情報と事業機会の提供を行っている。
インドやルワンダで目の当たりにした貧困問題を原点に、「そこに問題があるから」「誰かがやらなければならないから」と、持ち前の行動力で起業、そして日本を動かす組織づくりにも挑戦している牧浦。行動の原動力になっているのは「現地」だ。
「私がやろうとしていることは、経営の教科書には載っていません。だから自分で現地に行って、泥臭くやっていくことを大事にしています」