起業家

2023.10.14 11:30

ガーナの農家2.6万軒に融資 成長の理由はテクノロジーと「泥臭さ」

Degas(デガス)代表の牧浦土雅


2018年の夏、牧浦は5年ぶりにルワンダの農村を訪問した。この国の都市部は近年著しく発展していたが、農村は5年前から何も変わっていなかった。

「ルワンダは、1994年にわずか100日で80万人以上が犠牲になった歴史的な大虐殺がありましたが、そこから“アフリカの奇跡”とも呼ばれる飛躍的な経済発展を遂げました。首都のキガリには高層ビルが建ち、道路も綺麗に整備されています。しかし、都市から一歩出ればすべて農地で、農家の大半が貧困層。こうした現状は、アフリカの多くの国でも同じだということもわかりました。農家の所得の向上がなければ、アフリカは発展しえないのです」

ガーナの小規模農家から貧困問題を解決する

牧浦は2018年11月、そうしたアフリカの現状を変えるために起業を決意する。
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起業の地には、地政学的な安定性を考慮し、比較的安定して事業が運営できるガーナを選択。ガーナでは、労働人口の7~8割にあたる約800万人が農業に従事し、少なくとも500~600万軒の小規模農家がある。ガーナからスタートし、周辺諸国に展開していこうと考えた。

Degasが金銭ではなく肥料や種子などの農業資材を融資するのには、理由がある。そもそも農家の所得が低いのは、肥料を使っていないために生産性が低いことが原因だ。ただ、肥料を買うためのお金を貸し付けるには与信と担保がなく、そしてそれが正しく肥料に使われるとは限らないというリスクもある。同様に、返済も現金ではなく収穫物を納めてもらうようにすることで返済率を高め、融資額の増額や、融資先の拡大につなげている。

事業の肝は、収穫まで農家に伴走する営農指導とそれを可能にするテクノロジーを駆使したオペレーション。Degasは約140人の従業員のうち、8割を現地のガーナ人が占める。牧浦をはじめとする日本人や白人が農地に赴くと、「国際機関の人だ、何かを無料で恵んでもらえる」という先入観を持たれてしまい、Degasの事業の仕組みが理解されない。そこで、ガーナ人が現地での営農指導に当たり、二人三脚で収穫量と返済率の向上に努めている。

オペレーションでは、自社開発したネイティブアプリや光学衛星を中心に農家と農地のデータを収集し、データドリブンなオペレーションを実現している。また、AIを駆使した与信判断を用いて、これまで一般的な金融機関の融資対象にならなかったアフリカの小規模農家への融資を可能としているのも特徴だ。
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「1年目で劇的に所得が増えるということはないので、農家にはそこをある程度許容してもらった上で、2~3年目以降はもっと所得が上がるようにしていきます。1年目でドロップアウトしてしまう農家も20%ほどいますが、最近はロイヤリティの高い農家も増え、新しいエリアで一緒に普及活動を行う機会も生まれています」
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文=三ツ井香菜 編集=田中友梨

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