自分ひとりでは、ものごとがうまく進まないとき。違う人や組織や業界の力を借りたいけど、どう口火を切ったらいいかわからないとき。みなさんは、どうしているだろうか。
巻き込みたい相手をうまく巻き込み、さらにお互いに相乗効果まで生んでしまう。今回は、そんなウィンウィンな関係になるためのヒントを「外交」の世界からお届けしたい。
「外交」と聞くと、少し固いイメージだが、わかりやすく「相手に何かを貸すことでお互いに潤う」ととらえたらどうだろう。相手に〇〇を貸すことを「〇〇外交」だとして、例をいくつか見てみよう。
まずは「パンダ外交」。中国にだけ生息するパンダを世界中の動物園に貸す外交だ。動物園にとって「レアな動物」というキラーコンテンツが生まれ、一目見ようと多くの人が動物園に押しかけることで経済効果が生まれる。さらに、中国=パンダの国というイメージが人々の間で広がると、中国に対して友好的になる。これが、お互いに潤う流れだ。
この「動物外交」の始まりは、なんと紀元前にさかのぼり、珍しい動物をお互いに贈り合うことで国間の親睦を深めていた。クレオパトラの時代には、ローマにキリンを贈る「キリン外交」が行われ、珍しい動物にローマ人も大いに喜んだという。その後もオーストラリアの「カモノハシ外交」(残念ながらカモノハシが乗っていた船がドイツ軍のユーボートに爆破されイギリスに到着できず)、お互いに自国固有の犬種を贈る「子犬外交」、さらに最近ではコモドオオトカゲを贈る「トカゲ外交」もあるらしい。
「〇〇外交」は、動物に限ったことではない。例えば、日本がアメリカなどに桜の木を贈った「桜外交」や、中東の王様が首脳の配偶者に宝石を贈る「宝石外交」なども親交を深めるための良い手段。もっと身近なところでいうと、日本の「お中元」。その土地ならではのものを相手に贈ることで、良い関係を構築する外交だ。
無形の価値を共有し関係を築く
「〇〇外交」のポイントは、相手がもっていない「レア」なものを貸すことだ。例えば、「政略結婚」。結婚相手として自分の「子ども」を貸すことでお互いに親族となり、同盟を結び、争いを避ける。今では考えづらいが、かつてヨーロッパ貴族の間や日本でも戦国時代に行われていた外交だ。貸すのは必ずしも「モノ」である必要はない。中国の「ピンポン外交」がそのいい例だ。冷戦時代の緊張感のなか、中国が6年ぶりに世界卓球選手権に出場。大会後に欧米の選手を中国に招待したのだ。卓球を通じて交流する「場」を貸すことで、アメリカとの国交回復のキッカケとなった。
ほかには、レアな「技術」を貸すという外交もある。例えば、日本の「鉄道外交」。相手国に鉄道を導入することで経済効果を狙うとともに、国同士の交流を深めるというもの。これも、歴史的によく使われてきた手法のひとつ。かつては造船や建築、学問や芸術など幅広い分野で行われてきた外交だ。