ブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術は、小売企業がサプライチェーン管理に革命を起こし、組織内のサステナビリティを高めるために利用できる革新的なツールとなる可能性があります。ブロックチェーンは分散型台帳で構成され、ピアツーピアネットワークに接続されたコンピュータ間で安全かつ透明性の高い方法で取引を記録することができるため、保存されたデータを操作することが困難です。そのため、小売業のサプライチェーンにおける透明性、トレーサビリティ、アカウンタビリティを強化するために使用することができ、その結果、非効率なサプライチェーンから生じる環境負荷の軽減に役立てることができます。
しかし、ブロックチェーンのマイニングに必要なエネルギー消費は、環境へ大きな負荷がかかる可能性があります。例えばビットコインは、そのエネルギー消費の多さが指摘されてきており、このため、従来のブロックチェーンマイニングよりも大幅に少ないエネルギーで済むプルーフ・オブ・ステーク・コンセンサス・メカニズムを採用したTezosなど、よりサステナブルな代替ブロックチェーンが開発されています。
また、ブロックチェーンは、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによって電力を供給することも可能であり、こうした技術によって環境への負荷を相殺することができます。
ブロックチェーンが小売業におけるサステナビリティの促進に役立つ具体的な方法は以下の通りです:
・商品の原産地をより適切に追跡・検証できるようになり、倫理的かつサステナブルな方法で調達されていることが保証されます。これは、電子機器やアパレルなど、サプライチェーンが複雑な商品にとって特に大切です。
・ブランドや小売企業が、自社の製品が森林破壊や土地の劣化、労働者の非人道的な扱いといった問題に加担していないことを確認する際の、トレーサビリティを強化することができます。
・製品やサプライチェーンのサステナビリティに関する透明性の高いデータや情報を消費者に提供し、ブランドや小売企業の信頼性向上につなげることができます。
・サプライチェーン・パートナー間のデータと情報の共有を促進し、サステナビリティに関する課題をより効果的に特定し、対処することを支援します。
ブロックチェーン技術は、小売サプライチェーン全体の透明性を高めることで効率化を促進し、「オペレーションの最適化」を促進します。また、サステナビリティに関する報告のための、透明で検証可能なデータを提供することで、EnCOREフレームワークの「卓越した報告とコミュニケーション」の要素に合致しています。
・IBMブロックチェーンプラットフォームは、小売企業が自動化された取引でスマートコントラクトを使用して製品の真正性と品質を確保しながら、リアルタイムで商品の動きを追跡できるように設計された一連のツールとサービスを提供しています。
このIBMのプラットフォームには、エネルギー使用量、水使用量、二酸化炭素排出量など、サプライチェーンのオペレーションが環境に与える影響を監視するツールもあります。サプライチェーンからの環境への影響に関するリアルタイムのデータを提供することで、小売企業はより多くの情報を得ることができ、業務内の非効率に対してより良い対策を講じることができます。
IBM Blockchain Platformは、付加価値の高いツール、導入オプション、オープンソースのフレームワークを提供する。
出典:IBMウェブサイト
WHAT WE THINK
サステナビリティの強化は、正しい行動や環境保全の支援を超えて、ブランドや小売企業にとって、環境への影響をますます吟味するようになっている同市場において、競争力を獲得するための重要な機会となっています。ブランドや小売企業は、事業運営の効率を高めることで、サステナビリティと収益性を同時に高めることがでるでしょう。環境負荷管理プラットフォーム、クラウドコンピューティング・プラットフォーム、スマートビルディング技術、クリーンエネルギー配送車、ブロックチェーンなどの技術を採用することで、業務を最適化し、環境負荷を低減し、業務全体を通じて環境に配慮したバリューチェーンを構築することができます。
ブランドや小売企業は、サステナビリティを優先することで、より良いブランドイメージを構築し、競合他社との差別化を図り、消費者とのより強い関係を築き、規制当局や投資家へのアピールを強化することができ、長期的な財務的成功と企業の持続性の可能性を高めることができるでしょう。
※この記事は、2023年8月にリリースされたRxR Innovation Initiativeからの転載です。