人員削減の背景には、Epicがここ数年にわたり下してきた決断がある。その原動力となってきたのが、ティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)のメタバースへの固執だ。スウィーニーは、メタバース追求に反対する者をことごとく罰しようとしてきた。ここ数年、Epicに損失をもたらしてきた判断ミスのほとんどは、スウィーニーとそのメタバース関連の野心が原因となっている。
同社の人気ゲーム『フォートナイト』はもともと、メタバースを構築する入り口としては仮想現実(VR)やブロックチェーンよりも適しているとみられていた。だが、Epicはそのポテンシャルをまったく生かせていない。バトルロイヤルのゲーム部分は維持しているが、新たに導入した「フォートナイトクリエイティブ」モードでは、人々が存在し交流する場所としてのメタバースというSF的ビジョンを実現する大規模な空間を構築する代わりに、『マインクラフト』や『ロブロックス』を真似て、ユーザーによる制作の場を閉ざされた小さな島に限定することを選んだ。
「フォートナイトクリエイティブ」からはおもしろいプロジェクトの数々が生まれたが、メタバースの構築にはつながっていない。新規ユーザーの獲得には成功したが、そうしたユーザーはEpicから収益分配を受ける仕組みになっており、同社の利益は少ない。スウィーニー自身も、『フォートナイト』のメタバース化への「移行」が人員削減なしに実行できると考えていたものの、その考えが甘かったことを認めている。
しかし、同社の問題はそれ以外にもある。スウィーニーは、Valve(バルブ)とアップルというゲーム業界の大手2社に宣戦布告し、その戦いに途方もない額を費やしてきた。