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2023.10.01

私が手に入れたのは、仕事以上に役立つ武器

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、ナハト代表取締役の安達友基が『影響力の武器』を紹介する。 


本は、著名人などがYouTubeで紹介しているなかから、面白そうだと思ったものを選んで読むことが多く、本書も、あるYouTuberが薦めていて、「詐欺師の思考法」や「悪用厳禁」といったサムネイルに引かれて読み始めました。
 
本書は、「人を動かす方法」を語った本です。そもそも経済行動は、例えば、来店していただくとか、商品を購入していただくといった「人を動かす」ことが目的であり、特に、広告・マーケティングにおいてこの『影響力の武器』の考え方はとても重要です。しかし、私は、仕事以上に人間関係を築くうえで役立っていることが多いように感じています。
 
簡単に説明しますと、著者は人を動かす技術である「影響力の武器」は、たった6つに集約されると指摘しています。その6つとは、返報性、コミットメント、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性であり、本書を読んだことで、この6つを教えてもらったというよりも、6つ以外は省いていいものなのだと教えてもらったような気がします。そのおかげで、仲間と会社という組織をつくっていくうえでとても役に立ちました。
 
例えば、6つの内の「返報性」のルールを考えてみましょう。この「返報性」とは、人に何かをしてもらうと、してもらった人は何かを返したくなるという意味の言葉です。皆さんのなかで、スーパーで試食をしたとき、買わずには帰れないような気持ちになり、結局、購入して帰ってきた、という人は少なくないはずです。

これがまさに「返報性のルール」であり、実際に私も、いつもより高いトーンで明るく社員に話かけてみたところ、その社員も一段と明るい声になり、周りの空気が明らかに楽しげになったと感じられました。このように、周りの人の行動は自分の行動を映した鏡であり、相手が気分よくいられるよう心がけることは、実は、そのまま自分自身に返ってくるものなのです。
 
これはきっと、人間が社会のなかで生きていくために必要なものであり、進化してきた過程においても変わることなく備わってきた傾向なのでしょう。
 
このように、著者が重要だとする6つの武器は、決して特別なものではありません。もしかしたら、誰もがもともとひとつやふたつ、もしくは複数をもち合わせているものなのでしょう。ただ、その武器は使い方によっては人を傷つける可能性もあり、どう使うかが人としていちばん大事なのではないでしょうか。
 
本書が、世界でベストセラーになっているのは、これら6つの武器を意識することで、自分が「正しい行動」ができているのかを知ることができるうえ、人を心理的に動かす」方法が見えてくるからなのでしょう。

title/影響力の武器
author/ロバート・B・チャルディーニ(著)社会行動研究会(訳)
data/誠信書房 2970円/492ページ
profile/1945年生まれ。アメリカの社会心理学者。アリゾナ州立大学心理学、マーケティング学教授。スタンフォード大学マーケティング、ビジネス、心理学の客員教授。Influence at Work社代表。本書は新しい知見を加味した「戦略編」などのシリーズがある。


あだち・ゆうき◎1993年生まれ。東京都世田谷区出身。中央大学法学部を卒業後、起業家へ。2018年に広告代理店ナハト創業。広告関連以外にも、メディア、プロダクション事業、D2C事業へ拡大。また、若者の活躍支援や地方の地域活性化にも取り組む。

文=内田まさみ 写真=タワラ

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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