国内

2023.09.27

ミカンを腐りにくくするプラズマ殺菌装置 農産物長期保存の挑戦

プレスリリースより

世界中で問題にされている食品ロスのうち、約45パーセントは農作物で、保管と流通の段階で傷んでしまうものが多いためだという。とくにサプライチェーンが整っていない発展途上国では損失が大きい。だが従来の薬剤を使った殺菌はコストも手間もかかり、しかも環境や健康への問題があり消費者に敬遠される。そこで注目されているのがプラズマだ。九州大学の技術を使ったスタートアップ「タベテク」は、薬剤処理や洗浄などを必要とせず、柑橘類を長期保存できるプラズマ殺菌装置を製品化した。

柑橘類の保管庫にこの装置を置くと、大気圧プラズマが個々の柑橘類を包み込み表面を殺菌する。同時にオゾンが柑橘類内部の抗酸化活性を促し、自ら鮮度を保とうとする力が働く。これにより、たとえばミカンなら3週間経っても見た目や味に変化がなく、ほとんどカビが生えない。Sサイズのダンボール箱ぐらいのサイズで、稼働は1日に2時間ほどでよく、冷蔵設備は必要ないため電気代は月に200円程度だという。装置の年間レンタル料は11万円。
何もしない状態で3週間置いたミカン。

何もしない状態で3週間置いたミカン。

プラズマ処理をして3週間後のミカン。

プラズマ処理をして3週間後のミカン。


創業者の田苗眞代氏は、歯科衛生士をしていたとき、九州大学の林信哉教授からプラズマ殺菌装置を機器の殺菌に使えないかと持ちかけられたのがきっかけで、医療用プラズマ殺菌装置を製品化するスタートアップの起業を決意した。しかし食品分野に可能性を感じ、方向転換。九州の農家と協力して実験を重ねてきた。

タベテクはこのほど、経済産業省の起業家育成・海外派遣プログラム「J-StarX」に採択され、シンガポールとインドネシアへの本格的な進出を決めた。現在はこの装置を活用して、日本産の温室ミカンを東南アジアへ、トルコ産の柑橘類を東南アジアに輸出する計画を進めている。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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