公衆衛生のガイドラインでコンドームが完全に無視されているわけではないが、政策的な焦点や資源の配分においては、重視されていない。その結果、コンドームはもはや一般的な方法とは言えなくなっている。一般的な傾向として、人々はHIV予防策として、他の手段よりもPrEPを選ぶようになっている。PrEPを使用している人は、コンドームの使用率が大幅に下がることが研究で示されている。
PrEPが図らずもクラミジアなど他のSTI増加の原動力になっている可能性については、研究者の間で意見が分かれている。
さらに、ドキシサイクリンの予防的使用が、抗生物質に耐性を持った病原体の出現を促進する懸念も高まっている。すでに米国の淋病症例の約25%は、ドキシサイクリンと同じ種類の抗生物質に耐性を持つ淋菌によるものだ。
こうした中、梅毒、クラミジア、淋病について、厄介だが治療可能な病気だとして軽視する風潮が広まっている。だがこれらの病気は、不妊症や臓器障害を含む永続的な合併症を引き起こす可能性があり、米当局はこうした世間の認識を変えようと試みている。
こうした風潮が広まっているのは、米国だけではない。たとえばオランダでは、2022年に淋病患者が33%増加したにもかかわらず、多くの若者は感染しても「薬をのめばいい」と考えていると地元メディアは報じている。つまり、セーフセックスは必要ないという考えだ。
PrEPとドキシPEPの登場により、コンドームを使わなくともHIV感染リスクを劇的に下げ、他の一部のSTI感染リスクも緩和することが可能になった。しかし、それでもなお、体液や皮膚の接触を通じて容易に感染する性感染症のリスクがあることに変わりはない。
予防としての治療に加えてコンドームを一貫して使用することが、最適な予防手段となる。しかし、公衆衛生機関がPrEPやドキシPEP の形で予防としての治療を優先しているとみられる中、コンドーム配布に対する政府予算の欠如は顕著だ。
(forbes.com 原文)