とはいえ、米国でのSTI症例は2021年には250万件に達し、その多くはコンドームの使用で防げた可能性がある。特に急増しているのは、クラミジア、淋病、梅毒だ。米国内で報告された淋病の症例は2009~2021年に118%増加。また、女性の梅毒感染は2021年に49%急増した。
そのため、2000年代初頭にはほぼ撲滅されるところだった梅毒が、再び各地で広がっている。さらに、薬物乱用のまん延が、梅毒の問題を悪化させている。
一方で、性感染症予防に最も効果的な方法の一つであるコンドームの使用は確実に減少。全国的な調査によれば、使用率は2011~2021年の間に75%から42%に急減している。
現在、米公衆衛生当局の焦点は予防としての治療だが、これには隠れた危険もある。
STI感染が全米で増加する中、一般的な抗生物質であるドキシサイクリンをクラミジア、淋病、梅毒の感染予防薬として使う「ドキシPEP」という用法が、ゲイやバイセクシュアルの男性、トランスジェンダーの女性を中心に利用されている。
研究によれば、性行為後すぐにドキシサイクリンを服用すれば、性感染症を阻止する曝露後予防内服(PEP=post-exposure prophylaxis)としての効果がある。7月には、全米性感染症科長連合会(NCSD)がこの予防法のガイドラインを公表した。
ドキシPEPは主に、HIVに感染しているか、抗レトロウイルス薬を含む曝露前予防内服(PrEP=pre-exposure prophylaxis)などのHIV感染予防薬を服用しているゲイやバイセクシュアルの男性、トランスジェンダーの女性を対象に利用されている。
米国のHIV陽性者は100万人以上に上る。大半が、性行為や注射薬物の乱用による感染だ。米国では現在でも年間5000人近くがエイズで死亡している。
PrEPは、HIVに感染していない人が利用することで、性行為によるHIV感染を99%予防できる。またHIV感染者は、治療薬を適切に服用し続けることで体内のウイルス量が検出限界以下になるため、他人に感染させる可能性がなくなる。