アート

2023.09.26 16:45

鳥の目、虫の目で読み解く「アートと経済社会の可能性」

さらにテクノロジーの発達が、アートやクリエイティブな活動の価値向上を加速させています。日本には、豊かな文化と歴史があります。その日本が、経済的に産業育成の観点でもこの領域へ真剣に取り組むことが大事なのです。今まさに、国家レベルでの動きと、企業や社会の動きとをきちんと融合させた、「日本型のサステナブルなモデル」をつくるべきです。

日本の経済と社会の「ルネサンス」に向けて

経営学の世界でも、カルフォルニア大学サンディエゴ校のウリケ・シェーデ教授が、新しい日本型経営モデルを再評価しています。鍵は、より人間中心の持続可能なモデルにありそうです。本連載でも、アート産業の発展が、日本型の社会や経営の「ルネサンス」につながることを目指します。

忘れてはならないのが、アーティストや関連する人々の生の感覚です。彼らは、社会の不条理や欠陥を鋭く見抜く視点と、そこから得たものをアートとしてカタチにする力をもっています。それら抜きでは、本質的な議論はできません。本連載では、ボストン コンサルティング グループで経営コンサルタントの仕事をしながらも、アーティストや制作を経験している私、岩渕と平岡が、現場の肌感覚をもって、インサイトを紡いでいくことを大事にしたいと考えています。

日本におけるアートと経済に関して、鳥のようなマクロな視点と、アーティストのミクロかつフラットな視点(虫の目)の両方の目をもって、挑戦的また前向きに、読者の皆さんと可能性を探っていきます。まず鳥の視点では、ビジネスとアートといった曖昧な定義ではなく、例えば経済、経営、産業、意思決定、イノベーションなどと、より「解像度」を上げて、日々の活動や実践につながる示唆を心がけていきます。

そして虫の視点では、課題に直面しているアーティストの実際の活動、画廊や業界の人々のバイブラントな動きや感覚を、インタビューなどを通じて取り込んでいくことで、より現実感のある方向性を示していきます。

テーマとしては、経済産業省の報告書でも注力した「1.市場の全体像とアーティストの活動」「2.企業経営」「3.地域」「4.テクノロジー」、4つの観点から日本のアートに関する議論を展開。よりリアルタイム性と感覚性が高い内容を、発信していきます。

アート・バーゼルで感じた「経営とアートの近さ」

最後に、個人的な経験から本連載でお話ししたいことを補足させてください。私は今年、スイスで行われた世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」に参加しました。最高額84億円で作品が購入されるなど、経済的なスケール感が日本とは全く異なることを肌で感じました。個人的には、抽象画の中でもマーク・ロスコ(Mark Rothko)やダン・フレイヴィン(Dan Flavin)といった美術家の幾何学モチーフ、色合いとしては品のある原色、金箔、銀箔、金属素材のものに特に強く惹かれました。
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文=岩渕匡敦

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