賞金はブレイクスルー賞財団から提供されている。同財団は、投資家ユーリ・ミルナー&ジュリア・ミルナー夫妻によって創設され、メタCEOのマーク・ザッカーバーグとその夫人プリシラ・チャン、グーグルの共同設立者セルゲイ・ブリンと、その元夫人であり、23andMeの共同設立者兼CEOアン・ウォジツキなども共同設立者となっている。
ブレイクスルー賞財団は過去12年間で、さまざまな分野の研究者に、合計で3億800万ドル(約455億1360万円)を授与してきた。
以下ではまず、生命科学部門で今回受賞した3チームについて紹介しよう。
米国のバイオ医薬品会社Vertex Pharmaceuticals(バーテックス・ファーマシューティカルズ)のフレデリック・ヴァン=ゴアとサビーネ・ハディダ、ポール・ネグレスクは、遺伝性疾患の治療に関する革命的業績で、2024年ブレイクスルー賞を受賞した。
バーテックスの科学者たちは1989年、小児に進行性の肺疾患を引き起こす嚢胞性線維症の原因となる遺伝的要因の1つを初めて特定した。現在、米国では約4万人がこの疾患に罹患している。遺伝的要因が発見された当時、この疾患の患者の平均余命は30年未満だった。
米食品医薬品局(FDA)は2019年、バーテックスの研究者が開発した「トリカフタ(Trikafta)」を承認した。これは、同社が開発した3つの薬剤を組み合わせるトリプル併用治療法であり、原因となるタンパク質を修復する。注目すべき点は、90%以上の患者に効果があると考えられていることだ。
トリカフタの開発に携わった研究者の1人であるヴァン=ゴアによれば、彼と同僚が考えていたアプローチの1つは、互いに作用し合って病気と闘う複数の医薬品を開発することだった。ヴァン=ゴアはフォーブスに「当初から、複数の薬を組み合わせる必要があることはわかっていた」と語った。
ヴァン=ゴアとバーテックスの他の研究者たちは、20年以上の歳月をかけてトリカフタの完成にたどり着いた。最初は、嚢胞性線維症患者のごく一部を助ける治療法を開発し、承認を受けていたが、それと平行してトリカフタの研究が続けられた。