宇宙

2023.09.20 15:30

宇宙空間の巨大な目? 珍しい「極リング銀河」、電波観測で偶然発見

極リング銀河「NGC4632」の電波・赤外・可視光の合成画像。ガスのリングが本体の渦巻銀河の円盤部に直交している(Jayanne English (U. Manitoba), Nathan Deg (Queen's U.) & WALLABY Survey, CSIRO / ASKAP, NAOJ / Subaru Telescope)

極リング銀河「NGC4632」の電波・赤外・可視光の合成画像。ガスのリングが本体の渦巻銀河の円盤部に直交している(Jayanne English (U. Manitoba), Nathan Deg (Queen's U.) & WALLABY Survey, CSIRO / ASKAP, NAOJ / Subaru Telescope)

オーストラリアの西オーストラリア州にある電波天文台で観測を行っていた研究チームが、珍しい「極リング(極環状)銀河」を2つ偶然発見した。その外観はまるで、銀河が丸ごと中に入った巨大な目のようだ。

極リング銀河は、恒星が渦巻き状に分布する円盤部に直交する、美しいガスのリングを持つ特異な銀河だ。

銀河600個の水素ガスの調査中に発見されたこの2つの銀河は「NGC4632」と「NGC6156」として知られるどちらも渦巻銀河で、おとめ座と南天のさいだん座にそれぞれ位置している。

上の画像に写っているNGC4632は、極リングを持つことが、観測史上初めて電波望遠鏡によって明らかになった銀河の1つだ。この画像は、ハワイのすばる望遠鏡による可視光画像と、西オーストラリア州のASKAP電波干渉計による電波画像を合成して作成されている。

宇宙で最も目を見張るような

今回の研究をまとめた論文の筆頭執筆者で、カナダ・クイーンズ大学物理・工学物理・天文学部の博士研究員ネイサン・デグは「極リング銀河は、宇宙で最も目を見張るような外観の銀河の1つだ」と指摘。「今回の研究結果は、近隣の銀河の1~3%にガス状の極リングがある可能性があることを示唆している。この割合は、光学望遠鏡で示唆されるよりもはるかに高い」と話した。研究チームの論文は、英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載された。

これらのレアな銀河は、全天HI(中性水素ガス)探査計画「WALLABY」の一環で発見された。論文の執筆者らによれば、今回の結果を踏まえると、WALLABYによって新たな極リング銀河が多数見つかることが期待できるという。WALLABY計画全体では、約50万個の銀河からの水素原子輝線を検出する予定だ。
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翻訳=河原稔

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