また、森トラスト・ホテルズ&リゾーツでは、木製や竹製の歯ブラシやヘアブラシ、プラスチック含有量を減らしたカミソリやシャワーキャップの導入、ソープやアメニティの個包装の廃止、アメニティの有料化などを通じて、観光資源の保全に取り組んでいます。
同社は、全国で運営する18のホテルで、年間約16トン使われているホテルアメニティの見直しをし、2024年度を目処に、アメニティのプラスチック使用量を90%以上削減することを目指しています。
問われる旅行者の意識と行動
サステナブルな観光の未来に向け、宿泊施設をはじめとする観光事業者が変革を進める中、観光の主体となる旅行者もこうした流れに足並みをそろえ、意識と行動を変えていくことが極めて重要になります。世界35の国・地域の3万3000人以上の旅行者を対象に行われた、ブッキングドットコムによる2023年版「サステナブル・トラベル」に関する調査の結果によると、世界の旅行者の76%(日本の旅行者の56%)が、今後1年間において、よりサステナブルに旅行したいと回答しています。
一方、世界の旅行者の76%(日本の旅行者の75%)が、世界的なエネルギー危機と生活費の高騰が支出計画に影響を及ぼしていると回答。旅行費用の削減も余儀なくされていることから、サステナブルな認証を受けた旅行のために追加料金を支払うことをいとわないとした世界の旅行者は43%(日本の旅行者は22%)にとどまりました。
こうした傾向から、観光事業者による、割引や経済的なインセンティブなどの提供は、旅行者のサステナブルな旅行の選択を後押しすることができるかもしれません。また、世界と日本の約過半数の旅行者が、サステナブルな旅行の選択肢の数が十分にないと回答していることから、情報や選択肢を増やすこともサステナブルな旅行を後押しするかもしれません。
リジェネラティブな観光が主流になる未来
トラベル・ジャーナリストの寺田直子氏は、「私たちがすることはひとつ。積極的にサステナブルなホテル&リゾートを選び、経済効果を与えること。ゲストの私たちがいてこそサステナブルな環境は続いていくのです」と述べています。環境、社会、経済への影響に配慮したサステナブルな観光の実現には、地域住民の生活や自然環境に与える影響に責任を持ち行動する、旅行者の意識の変革が不可欠です。受け入れ側と旅行者による、足並みの揃った行動変容が実現した先には、サステナブルな観光をさらに発展させた、リジェネラティブ(再生型)な観光が主流化した未来が待っているでしょう。
世界経済フォーラムが発表した「2021年旅行行・観光開発指数:持続可能でレジリエントな未来に向けた再構築(Travel & Tourism Development Index 2021: Rebuilding for a Sustainable and Resilient Future)」では、日本が開発指数ランキングの1位に選出されています。
魅力的な観光地として、世界に高く評価されている日本が、「旅行者が訪れれば訪れるほど、その地がより良く変えられていく」リジェネラティブな観光の未来をリードする役割を担うことは、グローバルな観光産業の変革に大きな影響を与えることにもなるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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