はい。複業先生を社員のアウトプットの場として活用している人事担当者もいます。社員が複業先生をやると元気になることに気づき始めているんです。
母校に行った複業先生が感動して泣いてしまうことがあるんですよ。仕事を通して泣くほどの感動に出会える瞬間ってそうそうないですよね。いわゆる「感情報酬」と言うんですかね。そこでしか得られない共通体験に価値があると思う人が増えています。
──経営ではどのようなことを心がけていますか?
僕の経営スタイルは、関わる人が多ければ多いほど、かけられる時間が長ければ長いほど良いと考えています。過疎地や貧困地域にも僕らのサービスを届けて人々の人生を豊かにするには、最速最短で何かをつくればOKってものじゃない。スタートアップとしては矛盾していますが、そのパラドックスを内包しつつ経営をしています。
そもそも、何のためにテクノロジーがあるのか。テクノロジーが社会へもたらす変化は大きく2つあり、小口化と透明化です。大きなクラスターでしか実施できなかったカリキュラムが、授業単位で実施できる。これまで出会えなかった人と出会えたり、見えなかった願いが届いたりするようになるんです。
僕たちのサービスも、現場のコストが下がるという面ももちろんありますが、ご縁が広がって仲間が増えるという面もあります。そのように社会が豊かになる方向へテクノロジーを使うことが、意味のあるイノベーションだと考えています。
起業したときに「これはビジネスにならない」とか「こんな難しいマーケット、スタートアップでやるべきじゃない」とか、いろんな人から苦言を呈されました。でも、僕らを見て「面白い」「自分もやってみたい」って思ってくれる人が、生徒にも起業家の卵にもたくさんいる。数十年後、彼らが志を叶えたときに「あのとき学べてよかった」と僕たちのサービスを考えてくれたら、それでいいと思っています。