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2023.09.18

5年間の教員を経て起業 学校変革にスタートアップを選んだ理由

LX DESIGN 代表取締役 金谷智(提供=LX DESIGN)

──サービスのアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

5年間の教員生活は毎日が不満だらけでした。日本の学校教育の品質は素晴らしい一方で、組織が大きい分、業務内容やオペレーションの整理、テクノロジーの活用などにおいて、現場への啓蒙など必要なことが多いと感じていました。

自分一人でできることには限りがあるので、多くの人に専門性や経験を活かして関わってもらう仕組みを作ることで、変革の必要性や実現イメージを現場の先生たちに持ってもらうことから始めるしかないと思いました。

外部人材の活用はいまに始まった話ではなく、過去には民間人校長の登用やコミュニティスクールといった「地域の大人を巻き込む学校づくり」というものもありました。しかし、先生が1人で数十人の児童・生徒を見る構造が既存の学校教育。そこに対して何千人の複業先生というコミュニティができると先生も救われるし、子どもたちも学習形態の固定観念から解放される。これがアイデアの原点です。

僕らは先生たち向けに業務効率化や情報共有と謳ってサービスを提供していますが、いくらAIやグローバル化と言っても、使う人たちが本当に必要としているのは、日々の授業づくりのサポートです。メンタル面も含めて逼迫したなかで、周囲に頼れず抱え込んでしまう先生たちの「来月の学習どうしよう?」に対する一番の理解者でありたい。複業先生なら、地方の公立学校の先生でも、世界中の1000人を超える複業先生に助けを頼めることが、彼らにとって希望になるといいなと思っています。

例えばインド工科大の学生と、富山の小学校の先生って、人生にほぼ接点がないはずですが、複業先生では出会える。バックグラウンドが異なる世界をテクノロジーを使って繋ぎ、多様性のあるコミュニティを作っています。

縁をつなぎ、感動を共有する学習体験

──これまでに300以上の学校が「複業先生」を導入しています。現場の反応はいかがでしょうか?

鳥取の高校で宇宙産業の話をしてくれた複業先生がいるのですが、授業後に「宇宙の仕事をしてみたいと思いますか?」と生徒に聞いたら、40人中40人が手を上げたそうです。そうやって人の心に残るきっかけを作って、生徒らの夢が叶うように一緒にチャレンジしていく。それが面白いと共感してくれる人が増えているし、そういった人たちとのご縁を大事にしています。

それと最近は生成系AIを使ったサービスも開始したのですが、拒否反応があるかなと思いきや、先生たちの興味が高くて驚いています。地域や学校の種類を問わず、積極的にAI機能を試してくれている。自分たちがコミットすべきは生徒に向き合う時間や学びの場を豊かにすることで、テクノロジーに頼れるところはどんどん頼ろうという、判断の嗅覚や変化への意欲はすごく高いです。

また、現場がやりたいけどできないことと、教育長がして欲しいことって、実は極めて似通っているんです。よく「教育委員会が怖くて提案できない」という現場の声を教育長に伝えると「ぜひ提案して下さい」なんて反応が返ってきます。僕たちはそこのコミュニケーションにおける翻訳機能も果たしています。
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