大企業トップなどエグゼクティブへのマンツーマンのみならず、昨年5月からは一般向けに「世界最高の話し方の学校」も開校。菅・前首相を特別講師に招くなどで話題を呼んだ。今月はその第5期が始まり、のべ100人の生徒たちが参加する人気校に育っている。最新書籍『世界最高の伝え方』もたちまち重版の好調ぶりだ。
ここでは同書から、「伝説の家庭教師」が開陳する秘技、「7つの言い換え」の一部を以下、転載で紹介する。
「叱る」は本当に効果的?
「間違った考え方を改めてもらいたい」
「行動や態度を変えてもらいたい」
他人にそう感じることは、誰でも一つや二つあることでしょう。
そういう人に対しては、やはり、「『叱る』という行動は効果的」と思われがちです。「叱る」人の頭の中には、5つの誤解が隠されています。
1. 自分が「叱る」、相手は「叱られるべき」上下の関係性がある
2. 相手は間違いや弱みを「わかっていない」ので、指摘してあげるべきだ
3. 私が正しく、相手は間違っており、私のやり方は相手にも通用する
4. 人は叱られないと、甘やかされ、成長できない
5. 叱ることには効果がある
このどれもが、じつは間違っています。
上下関係に基づく、「上→下」の一方的なコミュニケーションは、人の考え方や行動を変えるうえでは、効果が薄い方法です。
年齢や身分が上の者が常に正解を持ち、下の者は従うべきという考え方も、いまや時代遅れ。あなたの相手への評価が歪んでいる可能性も否定できません。
これだけ時代の変化が速い時代に、紙とファックスでやってきた旧世代のやり方がいつも正しいわけはないですよね。
価値観も大きく変わり、多様化する中で、昨日までの常識は、あっという間に、今日の非常識に変わります。
正しく指導しているつもりでも、古くて時代遅れのやり方を押しつけているだけ、という可能性は高いのです。
人によって、最適解はさまざまで、自分のやり方が相手にも通用するとは限りません。
そして、「人は叱られないと成長できない」「叱ることには効果がある」という考え方もじつは間違っています。詳しく解説していきましょう。
「叱る」はじつは無効果
叱る、すなわち、相手の非をあげつらい、批判する行為は「基本的に効果がない」ということは、多くのグローバルな科学的研究から明らかになっています。
たとえば、次のような研究結果も出ています。
教育の現場でも、同様の研究があります。
厳しい言葉が飛び交うスポーツの舞台でも、批判や否定、叱責は「百害あって、一利なし」ということが明らかになっています。
といったように、否定的なフィードバック・批判は相手を嫌な気分にするだけで、効果がないということが多くの研究から実証されているのです。