教育

2023.10.02 08:00

批判は部下の学びを阻害? 「叱って育てる」にまつわる恐ろしき5つの誤解

石井節子
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状況がどんなに危機的でも叱ってはいけない


手術室で執刀する先輩医師が、ミスを犯した後輩医師を叱りつける。

ドラマなどでありそうなこんな叱りつけも、教育効果がないばかりか、「患者にも悪影響を及ぼす」という研究さえあります。

人の大切な命を預かる現場ですから、「もし間違いなどあれば、厳しく指導するべき」と考えてしまいそうですが、叱責は相手を萎縮させるだけで、効果がありません。

同じく、人の命がかかった、飛行機のコックピットの中を想像してみてください。

副機長がちょっとした間違いを犯しました。

「ダメじゃないか!」と機長の怒号が聞こえてきそうですが、これもアウト。

こうした叱責は、将来的に、間違いを犯した人が、それを隠蔽しようとするリスクを高めたり、上長の間違いも指摘できなくなったりしてしまうからだそうです。

たとえ、あなたの叱責・批判が図星だったとしても、状況がどんなに危機的だったとしても、声を荒らげて叱りつけることは逆効果になります。

「叱る」は基本、相手の行動を変える力はあまりないばかりか、「あなたがどんなに嫌な奴だったのか」という記憶を相手に植え付けるだけで終わるのです。

『世界最高の伝え方』(岡本純子著、東洋経済新報社刊)

世界最高の伝え方』(岡本純子著、東洋経済新報社刊)





(写真=曽川拓哉)

岡本純子(おかもと じゅんこ)◎
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション戦略研究家。グローコム代表取締役社長。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。英ケンブリッジ大学院国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。1991年、読売新聞社に入社後、経済部記者として日本のトップリーダーを取材。アメリカでメディア研究に従事したのち、電通パブリックリレーションズ(現電通PRコンサルティング)にて、企業経営者向けメディアトレーニング、プレゼンコーチングに携わる。2014年、再び渡米し、ニューヨークで「グローバルリーダー」のコミュニケーション術を学ぶ。新聞記者時代に鍛えた「言語化力」「表現力」、PRコンサルタントとして得た「ブランディング」のノウハウ、アメリカで蓄積した「パフォーマンス力」「科学的知見」を融合し、独自の「コミュニケーション学」を確立。現在は、日本を代表する大企業のリーダー、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。これまでに1000人を超える社長・企業幹部に、秘伝の「コミュニケーションレシピ」を伝授。その「奇跡的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。2021年、「今年の100人」として「Forbes JAPAN 100」に選出。2022年5月には、次世代グローバルリーダーのコミュ力育成のための「世界最高の話し方の学校」を開校した。著書に同書のほか、シリーズ累計20万部を突破した『世界最高の話し方』『世界最高の雑談力』(共に東洋経済新報社)などがある。

文=岡本純子

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