報告書は、英国で2023年から2040年の間に、喫煙や飲酒などのリスク要因に関係するがん370万件が新たに診断されると予想。これらのがんが個人、家族、医療システム、さらには生産性低下という形で経済に及ぼす損失は、2048年までに1兆2600億ポンド(約232兆円)に達する可能性があるとした。がんの約40%が、肥満、紫外線、飲酒、喫煙などのリスク要因に関連していると考えられている。
報告書をまとめた研究チームは、英国の人口増加に伴い、予防可能ながんがどれほど増加するかを推定した。がんの罹患率自体は大きな上昇は予想されていないが、人口の増加により、がん診断件数は増えるとみられる。
報告書によると、2023年には18万4000人が予防可能ながんを発症し、関連費用は約780億ポンド(約14兆3000億円)に達すると予測される。2040年には、新規症例が22万6000件に増える可能性がある。
英紙ガーディアンの委託で調査会社フロンティア・エコノミクスが実施したこの研究の結果は、専門家による査読を受けておらず、学術誌にも掲載されていない。また、研究チームが将来の予測に利用しているがん症例と人口の傾向は、予想通りになるとは限らない。
だが英国のがん研究機関キャンサー・リサーチ・UKのミシェル・ミッチェル代表は同紙に対し、この研究結果はがん予防対策の必要性を示す「明確な合図」だと指摘。「もし最近の傾向が続けば、今から2040年までの間に、喫煙はがん症例を100万件増やす可能性がある。また、英国の成人2100万人以上が肥満になる可能性があり、それは13種類以上のがんに罹患するリスクを高める」と述べた。
世界で50歳未満のがんが増加か
学術誌BMJ Oncologyで先週発表された研究論文では、50歳未満のがん(早期発症がん)が増えている可能性が示された。論文によると、2019年の早期発症がん診断件数は1990年比で79%増加した。ただしこの数値は、この期間中に世界人口が40%以上増えたという事実を反映していない。さらに、罹患率自体が上昇したのではなく、がんの報告体制が改善した可能性もある。論文を執筆した研究チームは、本研究のこうした限界を認めつつも、運動不足、過体重、塩分の多い食事などが、50歳未満のがん発症を増加させている要因かもしれないと警告している。
この研究には参加していないロンドン大学クイーンメアリー校のスティーブン・ダフィー教授は、研究結果は「興味深い」が、適切に解釈するためには「かなりの時間と考察」が必要になるだろうと語った。
この研究結果の中には、先行研究と一致しているものもある。たとえば、英国での50歳未満の女性の乳がん診断率の上昇だ。ダフィーは、この傾向はがん検査体制の改善とは無関係とみられると指摘している。
ダフィーは英報道機関サイエンス・メディア・センターに対し、「興味深い結果が多くある」とした上で、「ただしこれらは複雑であり、がん予防管理関係者は、研究結果が実際に何を意味するのか、そして増加傾向を少しでも逆転させるために何ができるかを、今後数週間かけてじっくり検討する必要がある」と語った。
(forbes.com 原文)