欧州

2023.09.13 10:00

ウクライナ特殊部隊、黒海の石油掘削施設を奪還 新たな勝利に

ロシア側は2015年にボイコタワーを占拠したあと、ウクライナの沿岸方向に近づけ、水上捜索レーダーやヘリコプターの支援設備を設置した。この施設は海軍の前哨センサーとして機能し、二次的な役割として攻撃ヘリコプターの燃料や兵器の補充も担った。

ボイコタワーは、優れた港湾があるロシア占領下クリミア半島から黒海西部を経てズミイヌイ島に伸びるライン上に、ロシア海軍が数珠つなぎに設けた施設のうち、中ほどにあった「珠」と考えるといいだろう。そしてズミイヌイ島はオデーサの南約130キロメートルに位置し、付近には黒海での主要な穀物輸送ルートが走っている。

ロシア軍は2022年2月24日、ウクライナに全面侵攻した初日に、ズミイヌイ島を占領した。ウクライナ側は同年夏、特殊部隊や戦闘爆撃機、ドローン、長距離の榴弾(りゅうだん)砲を組み合わせた作戦を遂行し、ロシア軍部隊を排除した。

樹木が生えていないこの小島には現在、どちらの軍の部隊も駐留していない。しかし、ウクライナ側のほうがより自由に行き来できる状態にあるとみられる。ボイコタワーについても同じような状態になる可能性が高い。

巨大でほとんど動かない石油掘削リグは、対艦ミサイルや武装ドローン、ヘリ、戦闘爆撃機の格好の目標になる。そのため、どちらか一方がそれを永続的に占拠しようとしても相手側からの攻撃を防げる見込みはほとんどなく、守備隊が困難に陥るのは目に見えている。

1つ例を挙げよう。1988年、イラン軍はペルシャ湾にあった2つの石油掘削施設を中継基地として使っていた。米海軍の駆逐艦6隻はそれに対して何をやったか? ペルシャ湾を航行する艦船に対するイランの攻撃が激しくなると、米駆逐艦はこれらの施設を包囲し、中途半端な防御砲火をかわしながら攻撃し、炎上させた。

当時のマーリン・フィッツウォーター大統領報道官は「抑制した対応」だったと言ってのけている。

ボイコタワーも、狙われたらひとたまりもないだろう。同じ1987〜88年のイランとの衝突の際、じつは米軍側も石油掘削用の艀(はしけ)を特殊部隊の軽防御の基地に転用したのだが、隊員たちは「厄介な場所に放置された」と不満をおぼえたという。

ウクライナには、兵士たちに同じような思いをさせてまで、ボイコタワーに部隊を駐留させるやむを得ない理由はない。重要なのは、ロシア側がこの施設を使ってその北や西にあるウクライナの港からの穀物輸送を妨げたり、爆発物を積んでクリミアの黒海艦隊を狙うウクライナ海軍の無人艇を探知したりするのを阻止しておくことだ。

ウクライナにとっては、これらの目的のためにロシア軍によるボイコタワーへの接近を拒否できさえすれば、たとえ守備隊を常駐させることはできなくとも勝利になる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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