アート

2023.10.01 11:00

京都で「五感が開く」体験を ボーダレスな音楽フェスが始動

(C)KYOTOPHONIE|photo by Yoshikazu Inoue

中道:1回目をやってみて、どうでしたか。
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仲西:日本人はジャンル分けがすごく好きで、自分が好きなジャンル以外の音楽はあまり聞かないというか、新しいものにはあまり手を出しませんよね。フランス人はまったく違っていて、聞いたことがないから聞いてみよう、見に行ってみようとなる。だから日本人に、あえて聞いたことがない音楽を聞かせたくて。

世界はこんなに広くて、いろいろな音や価値観がある。そういう世界を知ってもらえるような国際音楽祭をやろうということで、かなりマニアックな世界の音をいろいろ集めました。

春開催のときに来場いただいたのは、本当に音楽が好きな方や、デザイン、アート、ファッションに興味があるような普段から敏感にアンテナを張っている方たちで、普通の方からはあまり反応がありませんでした。でも、KYOTOGRAPHIEも最初はそうでしたから、音楽祭も時間をかけてだんだん広がっていけばいいなと。
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中道:3人のアフリカのミュージシャンがお寺の庭で演奏している写真を見たのですが、その光景を見ただけで面白そうだなと思いました。どんな風に音楽が聞こえるのかなって。

仲西:東福寺という有名なお寺の光明院という小さな塔頭です。著名な庭園デザイナーの重森三玲さんがつくった綺麗な庭を囲うように寺の建物が建てられているんです。そこに舞台を作れば建物から全て見えるので、枯山水の庭に水に映った満月をイメージした丸いステージをつくりました。

3人のミュージシャンのうちの1人はサリフ・ケイタという世界で最も有名なアフリカのミュージシャンで、普段はビッグバンドで演奏しています。だけど今回は頼み込んで、伝統的なアフリカの楽器だけ使ったアコースティックな演奏を特別にしてもらいました。

それがすごく良くて。彼自身、何十年もそういう演奏はやっていなかったそうですが、あの演奏をきっかけに原点回帰して、京都のホテルでアコースティックだけでアルバム1枚分録音したそうです。日本の庭や建物からインスピレーションを感じたのでしょうね。
東福寺の塔頭寺院(Getty Images)

東福寺の塔頭寺院(Getty Images)


中道:ほかには何組ぐらいミュージシャンが来られたのですか。

仲西:1回目なので小さくやろうと思っていたのですが、結局10プログラムぐらいになりました。アフリカやブラジルのミュージシャン、日本のアンダーグラウンドなミュージシャン、KYOTO JAZZ SEXTETの沖野修也さんにも出ていただいて。他にも語りを入れないピアノだけの現代的な文楽に挑戦するなど、いろいろなことをやってみました。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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