ビジネス

2023.09.10 08:00

会員制への監視を強めるコストコの新たなビジネスモデルとは?

純利益が会員からの年会費にリンク

にもかかわらず、コストコが会員制度の運用を監視し、それをさらに強化してきているのには理由がある。実は、コストコの純利益の推移を見ると、会員から徴収する年会費にほぼ同額でリンクしている。つまり、あれだけの巨大な商売をしながら、利潤が出ないところまで価格を下げて消費者に提供し、自社の利益は会費に純然と依存している形となっているのだ。

つまり誤解を恐れずに言えば、商品が売れることとコストコが儲かることとの間には相関性がない。「安い!」とさえ顧客が信じられれば、ライバルたる「ウォルマート」に負けようが関係がない。

2022年の会員更新率は全世界で約90パーセントとなった。新規加入による会員数増加率も毎年約10パーセント前後を維持している。全世界で約2億人が会員カードを持ち、それは外国のコストコでも使える。 

ホノルルのコストコでは、会員であるリゾート客が初日にコストコに行き、滞在期間中の水だけでなく、パラソルやデッキチェアやボディサーフボードなどを買って、帰るときには地元の人たちにそれらを寄付して帰るという。飛行機でスーツケース1個につき往復で1万5000円以上の手荷物預かり料金をとられるくらいなら、現地で買うほうが安いという計算が成り立つらしい。

もし、さらにインフレ圧が強まり、人材不足が解消されず、(物流会社「UPS」のストライキに見られるように)物流費が上昇する場合、コストコはそれでも商品の値段を上げず、むしろ会員費を上げるつもりなのだろう。

であれば、さすがに他人の会員カードで買い物をするフリーライダーを許すわけにはいかない。

これまでアメリカのコストコのセルフレジには、「お目こぼし」があったかもしれないが、今後、それを続けると、会員の非会員の不正利用に対する不満が命取りになるともコストコは考えているのだ。

ところで、前出のケイティ・トーマス氏は、このコストコの動きに関して、「ネットフリックス」との明らかな類似点も指摘した。

ネットフリックスは、先月、別の場所で他人のアカウントを30日以上使用した場合、サービスの利用を停止し始めると発表したのだった。ネットフリックスの「親族間使いまわし」もまた、アメリカでよく見られていたことだった。

さすがに、自分の「閲覧履歴」や「マイリスト」の内容が見られてしまうので、他人と共有することはあまりないと言われてもいるが、会員の増加が鈍化しているネットフリックスでは、その取り締まりの強化でしか会員数が伸ばせられないと思っている節もある。

どうでもいいことだが、コストコとウォルマートのホットドッグ競争は有名だ。コストコがホットドッグとソーダ類のコンビネーションを1.5 ドルで提供しインフレ下でも値段を上げていない。ウォルマートも同じようなメニューをほぼ同じ値段で提供している。

あっちがうまいとか、こっちのほうがサービスはいいなどの評価が、YouTubeなどで多く見られるが、どちらも明らかに赤字でホットドッグセットを売り続け、消費者には強烈に愛されている。

筆者がコストコの係員に値段について質問してみると、ホットドッグを手渡しながら「これは商品じゃあないよ、特典だよ」と言い放った。これ以上に妙なる答えもないかもしれない。

文=長野慶太

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