経済

2023.07.31

コストコで「時給1500円」 日本企業の賃上げが物価に追いつくのはいつか

アメリカ発で、会員制の倉庫型店舗を展開する「コストコ」が、群馬県で時給1500円の求人を出した。2000円までの上昇があり得るといい、その給与体系にさまざまな業界で激震が走っている。

もちろん、群馬県の地元企業が同じように時給を上げることなどできない。言わば“黒船”のような形で外資がどんどん高い給与で人材を確保していくと、どうなるのか。日本は果たして、継続的な賃上げを実現し、デフレから脱却できるのだろうか。

物価は上昇 賃金はいつ上がる?

日本の今年6月の消費者物価指数(CPI)は3.3%。一方で、米国のCPIは3.0%と日米で逆点現象が起きていることが話題だ。日本は賃金が上昇していないにも関わらず、どこまで物価が上がるのか、と国民のなかでは不安が漂う。結論から言えば、物価上昇を追いかける形で、タイムラグがあるものの賃金は上昇すると考えられる。

日本の5月の実質賃金は、昨年同月比で1.2%減少し、14カ月連続でマイナスとなった。労働団体の「連合」は春闘での賃上げ率が平均で3.58%と、30年ぶりの水準となったものの、こうした賃金引き上げは、物価の上昇に追いついていない。賃金が追いつくまでの、タイムラグはおよそ1年はかかかる。つまり、勝負は来年の春闘だ。

日銀は「YCC」柔軟化に動いた

7月28日に日銀が、2023年度の物価上昇率の見通しを1.8%から2.5%に上方修正した。日銀が想定していたよりも上振れ、しかも、それを4月時点では見通すことができなかった。

これは、今後も想定を超すペースで物価上昇が続くかもしれないという不確実性を日銀自身が感じ取ったことを意味する。そして、物価上昇が確実に起きてから金利の上昇を認めるのは遅すぎる。マーケットに押されてしまい、日銀のコントロールが効かなくなる懸念を今の段階で抑えておきたい。そんな意図から、7月時点でイールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化に動いた。

引き続き、日銀は金融緩和を継続し、その枠組みの一つであるYCC調整を続けていくことに変わりはない。
 
物価や賃金には「価格の粘着性」がある。一定の方向性に張り付く習性があるのだ。日本は30年間にわたり、氷ついた物価や賃金が低位にへばりついていた。その粘着性がいま緩み、溶け始めて動き出したのかもしれない。

文=馬渕磨理子 編集=露原直人

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