キャリア・教育

2023.09.06 17:00

竹田ダニエルが考える現在とこれからの「成功」の定義とは

イラストレーション=エドワード・タックウェル

いまにマインドフルであり続ける

「幸せ」「喜び」といった、常にポジティブな感情だけを感じることは難しくても、「いまいる場所」を受け入れることは非常に大切だ。「成功したらきっと幸せになれる」「いまないものを手に入れれば、素直に喜べる」などと、「架空の未来に存在する、ほかの何か」に自分の幸福を結びつけてしまうと、いつまでも「いま」に不満を感じるだろう。
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社会的な成功者が「幸せ」であるとは限らない。貪欲に目標に向かって精進することはビジネスや競争において大切だが、ハードルの上昇を繰り返すと、いつまでも「達成感」は得られなくなってしまう。自分にとっての「成功の指針」を見失うと、根本的に「何のため」に人生を送っているのか、わからなくなってしまう。

そして世の中は、必ずしも「勝ち負け」だけで成り立っているわけではない。長期的な意味での社会貢献やコミュニティ単位での功績を「祝福」するかたちに評価が変われば、連帯や相互支援を通して、より強固で持続可能な事業や革命も可能になるはずだ。

「幸せになるには」「成功するには」と謳う自己啓発書は多いが、どのようにして幸せや成功を定義するのか、資本主義的な価値観を反映させずに考えることはとても難しい。「上を目指す」ことで、かつては夢を見ていた状況に立てたとしても、素直に喜んだり祝うことを自ら許さなければ、「いまの自分にないもの」ばかりにフォーカスしてしまい、虚無感と絶望感のみが残ってしまう。
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「成長したい、だけど現状に満足もしたい」。そんな矛盾、そして流動性を抱えながら、いまにマインドフルであり続けることでのみ、現状における幸せ、ないしは成功を感じることができるのではないだろうか。

今回、XGへの取材で、最も印象的だったのは彼女たちの「成功」のとらえ方だった。受賞や大きなステージなど、「かたちに残るもの」だけに価値を置くのではなく、チームとしての幸せや楽しさの基準を全員で常に確かめあっている。誰ひとりとして取り残さないこと、「横一列」になって前に進む方針を最優先すること、そうすることでより長く、「意味のある」活動を続けられる。

取材中もお互いの手をつなぎあったり、褒めあったり、補いあい、応援しあう姿は「いまを愛する姿」そのものだった。人や社会を犠牲にした成功の称賛から一歩先に進んでいった未来にのみ、インクルーシブで多様な成功があふれる社会が存在するのではないだろうか。


竹田ダニエル◎1997年生まれ、カリフォルニア州出身、在住。カリフォルニア大学バークレー校応用科学テクノロジー博士課程在学中。リアルな発言と視点が注目されるZ世代ライター、研究者。著書に『世界と私のA to Z』(講談社)。「30 UNDER 30 JAPAN 2023」受賞者。

文=竹田ダニエル イラストレーション=エドワード・タックウェル

連載

30 UNDER 30 2023

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