ただ、企業が生成AIに飛びつく前に考えるべきことは、過去にも3度のAIブームが来ていること、そして、それらが一時的なブームで終わってしまったことです。
その理由を考え、同じ轍を踏まないためには何が求められるのかを考えていきます。
ディープラーニング流行時に「PoC貧乏」多発
2000年代に始まった第3次AIブームは、ディープラーニングが主役です。2012年に行われたILSVRCという画像認識コンペで、ディープラーニングを使ったチームが圧勝したことにより爆発的に広がりました。ディープラーニングは生成AIにもつながる重要な機械学習の手法で、その意味ではいまのブームが第3次AIブームの集大成と言えるかもしれません。
AIブームの変遷
そして現在までの10年ほどで、AIを搭載したさまざまなサービスが生まれました。特に画像分野で多く、自動運転や異常検知、骨格推定など、みなさんも一度は聞いたことがあるような分野で活用されています。自然言語の分野では、チャットボットや翻訳はもはや当たり前に使われるようになりました。
そもそもAI、機械学習とは何か、どうビジネスに活用するのか、その実装方法といった教育という市場も形成されています。
ChatGPTの登場以降は生成AIに注目が集まりがちですが、それ以前も画像認識や翻訳といった単一のタスクにおいては十分に成果を挙げていました。ただし、これらの成果の裏には多くの失敗もあります。
PoCという言葉をご存知でしょうか。Proof of Conceptの略称で、新しいアイデアや技術の実用性を評価するための実験的なプロセスです。日本語では概念実証と言います。
これまでのAIブームでは、多くの企業が流行に乗り遅れないようAI部門や新規事業を立ち上げ、PoCを行いました。「とにかくAIだ」と意気込み、人とお金を投入した結果は、想像に難くないかと思います。
2017年ごろに 「PoC貧乏」「PoC死」という言葉もディープラーニングと同じぐらい流行しました。つまり、PoCを行ったが成果がないままお金だけが出て行ってしまったり、想定以上の困難が発生しPoCが途絶えてしまったりしたということです。
原因の一つは、ディープラーニングへの過度な期待や無理解。実装には大量のデータや専門知識、大きな計算リソースが必要なことを理解できていないまま見切り発車してしまっていました。
「誰でも使える」ことの危険性
さて、第4次AIブームではどうでしょうか。「AIは新たなステージにきた」という世間の認識と、「よくわからないけどすごいことができるんじゃないか」という期待の加速があるように感じています。
ChatGPTやStable Diffusion(画像生成)に代表される生成AIのサービスは、自然言語、つまり日本人であれば日本語での操作が可能です。これは過去のAIブームで取り上げられたAIとの決定的な違いで、誰でもAIに触れることができるようになったのです。速度や精度も優れていることから、広まるまでにそう時間を要しませんでした。
一方、生成AIのブームの過熱は、第3次AIブームの既視感が否めません。