これはサステナブルツーリズムを推進している人間にとっては、素晴らしい快挙だとすぐに理解できるのだが、残念なことにサステナブルツーリズム自体の浸透度が欧米に比べてまだまだ低い日本では、あまりその価値や取得の難しさについては知られていない。
そもそも「Travelife」とは何なのかだが、オランダに本部をおき、ツアー事業者や旅行会社を対象としたサステナブルツーリズム(持続可能な観光)の熟成度の審査を行う非営利の国際認証機関のことで、現在、世界80カ国以上が加盟している。
2007年、欧州委員会(European Commission)の支援を受けて設立され、認証審査をするだけでなく、そのための研修や手段、ノウハウなども提供している。
ツアー事業者や旅行会社は、まずこの組織の会員になり(会費が必要で事業者の規模によって金額が定められている)、さまざまな研修や指導なども受けながら、国際的に認められた持続可能性の2つの認証「Travelife Partner」、そしてその上の「Travelife Certified」の取得にチャレンジするという仕組みになっている。
審査では、地域振興としての地産地消や雇用創出への取り組み姿勢、異文化交流による多様性や平和への理解、自然の有効活用や気候変動などの環境への配慮、「観光公害」などの課題解決への向き合い方など、膨大な基準が用意されている。
そして書類審査や現地審査などを経て一定の基準を満たしたと認定された事業者だけが、本部からの正式なお墨付きとしての「Travelife Partner」や、「Travelife Certified」などの認証を、そのステイタスロゴとともに得られるというもものだ。
その目的は、観光による経済・社会・文化・環境面においての持続可能な開発目標( SDGs)の達成に大きく貢献するためのものだが、同時に事業者の世界レベルでの社会的な信用を高め、スタッフのモチベーションアップなどにも結びつくとされている。
また、自社の観光コンテンツを販売・PRする際に、この認定ロゴを示すことで、世界中の観光意識の高い旅行者、なかでも富裕層と呼ばれる人たちは、認定ロゴのある旅行会社や体験プログラム、宿などを選択すると言われている。
残念ながら、日本人が旅行をする際に、このロゴマークがついているかどうかを旅の選択の基準にする人はまだ少数だが、旅行事業者が本気でインバウンドで富裕層から選ばれることをめざすのであれば、今後、必須になってくることはいうまでもない。