それにいち早く手をあげてくれたのも山田氏だった。英語が堪能だったということもあるが、彼が「 セールス・アクティビティ」と呼ぶターゲット国の旅行会社との直接交渉をして、新しい観光商品のセールスをしている姿は、単に仕事としての営業ではなく、自分の人生そのものの考えかたを伝えようとしている強い想いが感じられた。
そして彼の提案した「SATOYAMA EXPERIENCE」という、地域住民との地域資源の保全活動をベースとし、農村集落を巡るガイドツアー「飛騨里山サイクリング」や暮らしを旅する「里山ステイ」などの各種の体験コンテンツは、欧米からの少人数グループツアーを中心に火がつき、この十数年のなかで数を伸ばしていったのだ。
宿泊施設のサステイナブルポリシー
これらを慈芳さんやスタッフとともに着実に進めてきことが今回の「Travelife Partner」取得に結びついたのだろうが、その道は決してすべてが順調なことばかりではなかったはずだ。例えば、彼らがTravelifeの定める100以上の基準をクリアするためには、研修を受け、それを実践するためのソフトとハード両面での環境整備や、研修代、会費など、それなりのまとまった資金も必要だっただろうし、小規模事業者にとっては厳しいことも多々あったのではと思う。
「僕らが、SATOYAMA STAYの宿をオープンしたのは実は、コロナ禍真っ只中のとき。海外がもとより、国内からの旅行客がまるでゼロになってしまった時にこんな事業を始めてしまい、どうしようかと一時は思った。でも、だったらこの誰も来ない期間を利用して、Travelifeの取得をめざし、徹底的に内部改革というか、自分やスタッフも含めたトレーニングに時間もお金も投資してみようと気持ちを入れ替えたんです」(山田氏)
その投資活動を、彼は「マーケティングアクティビティ」でもあるという。これからの観光事業者は常に自らの行動のなかでマーケティングをし、セールスもするアクティビストでなければならないというのが彼の持論だ。