線路脇にならぶ住宅の軒々をかすめるかのように走る路面電車、そのきわめて日常生活に近い乗り物の中で「移動」以外の体験ができることには思いがけない非日常感があった。
また、知らない乗客同士が会話もなく偶然乗り合わせることが前提の「公共交通機関」が、真逆の性質の「プライベートな」イベントスペースになるのもなかなかおもしろい。
そしてなにより、高校生たちが大人に対して、エネルギーたっぷり、力を込めてフードロス、世界の飢餓状況、海洋の汚染状況などについてデータを引用しながら具体的かつ立体的に「講義」してくれるという逆転関係(該当車両には同校の先生たちも乗車していた)が、実に快い非日常体験だった。
運営側・東急に聞いてみた
この「貸切」企画について、東急 社長室 広報グループ 広報企画担当 小倉一真氏に聞いてみた。子ども向けイベントで利用すれば、「運転手さん」はさすがにできなくても「車掌さん」の役目は体験できるかもしれないし、大人も、子どもの頃の夢が叶ったりするかもしれない。
都電荒川線も
ちなみに同じく路面電車で、荒川区の三ノ輪橋停留場と新宿区の早稲田停留場間で運行される「都電荒川線」も、個人が負担できるコストで1両まるまる、貸し切ることが可能なようだ。東京都交通局のHP上の情報によれば、片道運行の一般料金は1回1万3820円(学生割引あり)。希望区間が指定できるほか、車両5タイプから、貸し切る車両を選ぶことができるらしい。お盆や年末年始など、繁忙期を除く毎日、貸切が可能だ。