健康

2023.09.04 07:30

第8波に迫るか第9波。新型コロナ変異株「EG.5」にどう備える?

感染した場合の出社タイミングの目安は?

5類感染症移行後には、法令による感染者に対する外出自粛は求められなくなり、外出自粛期間は個人の判断に委ねられるようになりました。厚生労働省では「外出を控えることが推奨される期間」として、1. 発症日を0日目として5日間は外出を控えること、かつ、2. 5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ることが推奨される、としています。

感染者の約3割は発症後7日目でも感染性を有しているという報告もあり、5類感染症移行後でも、発症から7日目くらいまでは感染性が残っているとみなした対応が望まれます。5類感染症移行後の療養期間の短縮は、社会経済活動の観点に基づく判断であり、必要最小限の療養期間と認識してください。

以上を考慮すると、オフィスで勤務するビジネスパーソンが感染した場合には、可能ならば発症後7日までは自宅で療養(または在宅勤務)を行い、発症後8日目に出社のタイミングが安全だと考えています。ただし10日を経過するまではマスクの使用、高齢者などハイリスク者との接触を控える、感染リスクの高い行動(3密行動、飲み会、カラオケなど飛沫を発する行動)を控えるなどの配慮を行なってください。イラスト3に感染者の療養期間(外出自粛)の目安をまとめました。

イラスト3

新たな変異株EG.5に対する効果が期待。この秋からのワクチン接種について

報道によるとPfizer社は2023年8月17日、開発しているワクチンについてマウスを利用した非臨床試験で、EG.5に対する中和抗体の上昇を確認したことを明らかにしました。同日、Moderna社もプレスリリースにおいて、秋に向けて承認申請中のXBB系統対応ワクチンが、ヒトを対象とする予備的臨床試験で、新たな変異株EG.5およびFL.1.5.1に対して、中和抗体価の有意な増加が確認されたことを発表しています。

これまでの情報から、この秋から国内で接種予定のXBB系統に対応した1価ワクチンが、EG.5に対しても一定の効果を示すことが期待できます。ワクチン接種のスケジュールについては、自治体のホームページに公開されているのでご確認ください。

おわりに

「新型コロナウイルス感染症は風邪程度なので、感染者が増えて集団免疫ができる方がよい」と発言する人がいます。しかし、感染後は年齢、人種、性別、持病の有無に関わらず、脳血管疾患、心疾患などの重篤な疾患の発症リスクが高くなることが分かってきました。

新型コロナウイルスへの感染は個人にも社会にとっても大きな損失につながります。ネット上やメディアでは「専門家」と称する人たちが持論を展開していますが、科学のデータに基づき責任を持った発言をしている人は多くはありません。「自称専門家」や「ウワサ」に惑わされずに、科学データを基づいた判断が求められます。

更に新しい変異株が出現しても、私たちの行う感染予防対策には変わりはありません。これまで同様にマスクの着用、3密の回避、リスクの高い行動を控える、そして換気を行うことが重要なのです。


写真=曽川拓哉

写真=曽川拓哉


鈴木英孝◎1993年産業医科大学卒業。米国総合エネルギー企業エクソンモービル社日本法人、アマゾンジャパン合同会社の産業医としてグローバルな産業保健活動を経て独立、現在アッシュコンサルティングサービス代表社員。専門は職域の感染症管理、健康経営、化学物質管理、喫煙対策などを含む「産業保健」。新型コロナ ウイルス対策を始めとした感染症対策、労働衛生マネジメントシステムの国内導入を進め、さらに学会活動を通じて欧米型の産業保健活動を広く国内に紹介する。

文=鈴木英孝 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事