国内

2023.08.25 12:30

ヤフーや楽天は過去に撤退 「ライブコマース」がいま注目のワケ

デザイン性を高めすぎない

日本でも盛り上がりを見せ始めたライブコマースだが、藤瀬は、その成否を分ける要素について「エンタメ性」を挙げる。

「殺風景なスタジオから、企業の担当者やインフルエンサーが商品紹介をするケースも見てきました。しかし、ライブコマースのポテンシャルが本領発揮されるのは、もっとラフでカジュアルなスタイルなんです」

実際に、ピースユーライブを見てみると、配信者たちは、自宅や実店舗の陳列棚の前で、まるで知人におすすめ商品を紹介するかのようにライブコマースを実施している。配信者が販売するのは、ハンドメイドのアクセサリーや読み終えた本、占い、海外の現地ショッピングセンターでしか手に入らない商品などさまざま。顔を出さずに手元を映す形で配信する人も多い。

コメントによる反応や質問に答えながら、リアルタイムで話題が変わっていき、ライブ感が楽しめるのも印象的だ。視聴者数は、それぞれ数十〜数百人程度。有名人のライブ配信と異なり、投稿したコメントに反応してもらえる頻度も高く、ライブの参加者になったような体感が味わえる。

だが、アプリを眺めているとある違和感に気付く。UIに雑多な印象を受けるのだ。


ブラウザで開いたピースユーライブ画面


ピースユーライブ アプリ画面

ホーム画面に並ぶ配信者のサムネイルは、デザインやフォントに統一感がなくバラバラ。統一された世界観を、デザインで伝えようと試みるD2Cブランドなどとは、全く異なるアプローチに感じるが、その狙いとは何か。藤瀬はこう話す。

「親近感の湧くUIにすることで『私も配信者になれそう』だと思ってもらえる。見る側も気負わずふらっと立ち寄る感覚で視聴できる。これを狙い、意識的にデザイン性を高めすぎないようにしているんです。雑多さとデザイン性のバランスは必要ですが、デザインチームがあげてくれたものに『もう少し生活感を出して』と指示することも多々ありますよ」

地方のショッピングセンターのような、親近感と生活への密着。そんな存在を目指し、あえて現行のデザインを選んでいるのだという。ではその中で、“売れる”人はどんな配信者なのだろうか。

藤瀬は、「売れる配信者は、商品とお客様にスポットを当てて話すのがうまい人」だと話す。

「芸能人やインフルエンサーのライブコマースでは、主役はあくまで本人。それに対して、ピースユーライブは、買う側(視聴者)がより前のめりになれることが大事なんです」

コミュニティ内で視聴者と会話をするように進行するライブコマースが“売れている”のだという。配信者はさながら、モデレーターだ。
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文=井澤梓 編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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