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2023.08.21 08:30

Visional南壮一郎 「早く成功することに、何か意味はあるのか」

20代は「小学1、2年生」


20代の終わりに怒涛の日々を過ごして自分を磨いた南は、今の20代に向けて、どんなアドバイスをするのか。

「僕が社会人になった時の定年は60歳。働くとは、約40年間のジャーニーが一般的でした。今では人生100年時代と言われ、65歳では引退せず、80歳、85歳まで働くことになると言われています。もしそうであるならば、働くことが、約60年間の旅路に変わっています。そうとらえると、20代はどうあるべきなのか。20代に働く期間を年数で考えると、大学を卒業した場合は約7、8年で、60年間の働くジャーニーの内の10%強にあたります。

ここで、社会人となって働くことであろう60年間の期間を、小学校から大学卒業までの学生時代の期間に置き換えて、考えてみましょう。学生時代の小中高大で過ごす期間を全て足すと合計16年となります。先ほどの社会人になってから働くであろう60年間の期間のうち、20代で働く期間が全体の10%強であることをベースに考えて欲しいのですが、学生時代の16年間における10%強は約『2年』。つまり、キャリアにおける20代の期間を学生時代に置き換えると、学生時代の小学校1、2年生に過ごす期間のようなものなんです」

働く20代は、学業の世界に置き換えると、まだ小学1、2年生に過ぎないと、南は説く。

「これは、むしろ読者に問いかけたい。いま、大人の自分が、小学2年生の自分にどんなアドバイスをしますか。僕なら、『いい仲間を作れ』でしょう。もう一つあるとすれば、『親と先生の言うことをよく聞きなさい』ですよ。なぜなら、今ならわかるのですが、当時は、まだ何もわかってないから。そして、その時期に、やるべきことは何か。それは、もちろん『基礎』の反復ですよ。ひらがな、カタカナ、基本的な漢字を書けるようになり、数字の意味を理解した方がよいでしょう。なぜなら、最初は誰も当然のようにできないから。ちなみに、もう一つアドバイスを付け加えることができるなら、『自分の好きなことに熱中しよう』ではないでしょうか。今でも自分が自分に言っていることかもしれませんね(笑)」

20代は修行──そう言い切る南が考える「修行で身につけるべき基礎」とは何か。

「修行っていうのは、当たり前のことを、当たり前のようにできるようにするために頑張ること。何度も何度も、できるまでやり切ることが大切です。最初は、目標設定や行動の方法もわからないので、誰かに教わらなくはなりませんが、自ら考えて、行動することで磨かれていくものです。そして、何度も転んで、何度も立ち上がりながら、壁にもぶつかり、また立ち上がらなくてはならない。

そして、自分が登りきったら、後ろを振り返って、まだ登りきれてない仲間に手を貸してあげてもらいたい。人への教えを通じて、自らの学びがまたある。自分はできるようになったとしても、それを人に教えるっていうのは、さらに難しい。挑戦の先に失敗があり、新しい試練や学びがある。やっぱり時間がかかるんですよね、修行は。20代は、価値があることを、正しく理解するための失敗や苦労をする機会をたくさん持って欲しいし、仲間に手を貸し、自ら学んだことを言語化して伝える時間も持って欲しい」

そんな南がビズリーチを創業したのは32歳。同世代では、スタート時期が遅い起業だったという。

「僕の勝手な想いですが、いまの20代にはとにかく焦るな、と伝えたいです。遠回りしていいし、途中、道草を食ってもいい。移りゆく周りの景色や仲間の表情をよく見ながら、20代の時間を過ごしてほしい。そして、自分にとって30代は、練習試合としてとらえていました。30代で、きっちり20代で学んできたことを試合形式で練習し、40代以降に、自らの志を胸に、公式戦へ挑むイメージで仕事と向き合ってきました。

僕のような40代半ばになると、同世代の中から大企業で25年頑張ってきた仲間、公務員として25年やってきた仲間たちに、時代のスポットライトがあたり始めるのも、面白い現象です。社会人としての60年にわたるジャーニー。人によって、浮き沈みや感動のタイミングは違うのは当たり前です。僕にとって20代は、その後の人生をともに楽しむ仲間とよく遊び、公式戦を戦うための熟成期間だったんですよね。特にビジネスの場合は、基礎を学ぶための時間がかかるし、自ら変わり続けるために、さらに学び続けなくてはならない終わりなき旅です。そういう意味では、早く成功することに固執することに、何の意味があるのか。そう問いたいです」


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Forbes JAPAN編集部=文 小田駿一=写真

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