だが、人類の終末に向けてキラーロボットが訓練を重ねる映像を見るより悪いことがあるとしたらそれは、これらのロボットがモータウンの楽曲に合わせて踊るのを見ることだ。どういうわけか、不気味なロボットたちが映画『グリース』を思わせる振り付けでダンスを踊る動画を、ボストン・ダイナミクスはシェアせずにはいられなかったようなのだ。
こうしたロボットがいつの日か、どれだけの危害を与える可能性があるかを考えると、このダンス動画は、『グリース』というよりも、映画『パルプ・フィクション』でジョン・トラボルタ演じるギャングの殺し屋が踊るシーンを見ている感覚に近い。この映画の冒頭で、サミュエル・L・ジャクソン演じる殺し屋が、聖書の一節を引用した後のシーンのように、いつ何どき、これらのロボットがカメラの方に向き直り、凶悪な暴力行為におよぶのかと、心配でならないのだ。
1984年に公開された『ターミネーター』の第1作は、1980年代のSFブームの先駆けとなるSFアクション映画だった。当時はちょうど、一般家庭にもコンピュータが普及し始めていた時期だった。
この『ターミネーター』シリーズで、ほぼ40年にわたって主要登場人物のサラ・コナーを演じてきた女優リンダ・ハミルトンは、このSF映画が、当初はB級映画以外の何物でもなかったことを認めている。では、誰もがまだ手探り状態だったのなら、なぜ『ターミネーター』はあれほどの大ヒット作になったのだろうか?
まず、真に才能あるスタッフが制作に関わっていたのは確かだ。加えて、ターミネーターを演じたアーノルド・シュワルツェネガーは、常に破格のスターパワーを発揮していた。だが、人間型ロボットというものが、人々の想像力を刺激してきたことも理由の1つだろう。
『スター・ウォーズ』シリーズのC-3POから、『エクス・マキナ』の「エヴァ(AVA)」まで、人型のロボットは、映画のチケット売り上げに貢献してきた。それは、彼らが未来を感じさせる存在だからだ。ロボットが日常生活に組み込まれるまでは、今後も、何かが欠けているような感覚は続くだろう。
彼らが反乱を起こすことなく、シャツをパリっとアイロンがけし、建設的批判を穏やかに受け入れてくれるのなら、AIを取り入れた私たちの未来は、SFに描かれた世界より良いものと言えるだろう。
(forbes.com 原文)