宇宙

2023.08.10 13:30

ハリウッド映画の制作費以下で月に行く、インドの宇宙計画

2023年7月14日、インド・コルカタ。ビルラ産業技術博物館は学生向けにチャンドラヤーン3ミッションのライブ中継を行った(Dipa Chakraborty/ Eyepix Group/Future Publishing via Getty Images)

2023年7月14日、インド・コルカタ。ビルラ産業技術博物館は学生向けにチャンドラヤーン3ミッションのライブ中継を行った(Dipa Chakraborty/ Eyepix Group/Future Publishing via Getty Images)

インド宇宙研究機構(ISRO)が先月打ち上げた無人月探査機「チャンドラヤーン3号」は、8月5日に月の周回軌道へ無事進入した。各国の月面着陸プロジェクトが相次ぐ中で、インドのミッションの予算は、『ゼロ・グラビティ』や『オデッセイ』などの宇宙を舞台としたハリウッド映画よりも少ない点が注目されている。

チャンドラヤーン3号のミッションは、まだ探査が進んでいない月面の南極付近に着陸機と探査車を送り込む計画で、インドはアメリカ、ロシア、中国に次いで4番目の月面軟着陸を達成した国になろうとしている。

2020年にISROが提示した見積もりによると、このミッション全体のコストはわずか7400万ドル(約106億円)とされている。

2019年に着陸機を月面に墜落させたチャンドラヤーン2号のコストは9650万ドルとやや高かったが、このミッションには、現在も運用が続いているオービター(月周回衛星)が含まれていた。このオービターはチャンドラヤーン3号の着陸機との通信の中継に使用される。

チャンドラヤーン3号の予算の7400万ドルは、NASAの火星探査計画のMAVEN(メイヴン)の予算(6億7100万ドル)や、欧州宇宙機関の無人火星探査機「マーズ・エクスプレス」の予算(1億6400万ドル)よりも大幅に低い金額だ。

2014年にアジアの国として初めて、火星探査機「マンガルヤーン」を火星の周回軌道に乗せることに成功したインドは、最小のコストで最良の結果を生むことをモットーとし、モディ首相自身もこのミッションのコスト(7400万ドル)が、ハリウッド映画の『ゼロ・グラビティ』の予算1億ドルよりも安いと自慢気に語っていた。

『インターステラー』や『オデッセイ』『ゼロ・グラビティ』といった宇宙映画の予算はすべて1億ドルを超えており、特に、1億6500万ドルとされる『インターステラー』の制作費はチャンドラヤーン3号の予算の2倍以上となっている。

インドのチャンドラヤーン3号は23日に月の南極付近に着陸する予定だが、11日に打ち上げが予定されているロシアの宇宙船ルナ25号に先を越されてしまうかもしれない。ロイターによると、ルナ25号はチャンドラヤーン3号よりも短いスケジュールで月に向かい、インドよりもやや早い到着になる可能性がある。

4月に民間企業として世界初の月面着陸を試みた日本の宇宙ベンチャー「アイスペース」のミッションは、月着陸船が月面に墜落して失敗に終わっていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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