教育

2023.08.28 17:30

衣料品問屋4代目が広げる「食住学」クリエイティブな世界

武田:ホテルのコンセプトとして「Live and let live」を掲げています。それぞれの個人が自分らしくあり続ける。また、違いのある個人が集いコレクティブ(集合)となることで新しい価値を生み出す。そういう場をつくりたいと考えたんです。ですから1階には、全然違う価格帯で全然違う業態のものを入れようと考えました。

その1つが『nôl』というミシュランで一つ星をとっている高級レストランです。日本のストリートアートを含め現代美術を提案するギャラリー「PARCEL」です。全然客層が違うものが同じ場所にあることで、それぞれのコミュニティを越境し、新しいものを生み出す可能性みたいなものを作りたい。それが「Live and let live」です。

中道:そういうものが同じ場所に存在できるのは日本だからでしょうね。ヨーロッパ、特にイギリスでは社会的な階級ごとに集まるエリアがありますし、話し言葉を聞いただけでどの階級なのかなんとなくわかります。みんな自分の階級にプライドを持っていますしね。日本は世界に比べるとそういう格差がないのでミックスできるんですよね。さて、もう1つ「学」にも事業展開されていますよね。

武田:クリエイターが周りにいたので、クリエイティブな人材を育てたいなと思って。クリエイターの人たちにどうやって人生を決めたか聞いてみると、だいたい中高生の時に進路を決めないといけないんですよね。そういう10代の多感な時期に素晴らしい大人に出会えれば、より面白いことに取り組めるのではないかと思い、渋谷PARCOで10代の人たちがクリエイティブの原点に出会うことができる学びの場「GAKU」をやっています。
 キャプション仮「GAKU」

「GAKU」の様子


中道:すごく面白いですね。日本の教育にはクリエイティブの発想がありませんからね。このことを問題だと思っていないことが日本の問題で。みんな同じことを学ばなければダメだといまだに思っていますから。そもそも日本は教育にお金をかけなさすぎだと思うんです。海外にはお金のかからないパブリックな学校もあるけれど、それなりのお金を払って教育を受ける学校もあります。そういう教育を受けた人は社会に出た時に自分で稼げるようになるから、最終的にちゃんとプラスになるんですよ。

武田:教育にコストがかかるというのはおっしゃるとおりで。GAKUでは一流のクリエイターが生徒一人ひとりと対峙して、その子がしたいことを形にしていきます。その子の中にある答えを引き出して、それを形にして世に問い、フィードバックをちゃんとその子に返すということをやっているんですけど、お金がかかるんですよね。

中道:時間もかかりますね。

武田:日本人はこれまでアイデンティティに向き合ってこなかったので、アイデンティティが確立してないんです。あまりにも言語化して教え込み過ぎているからだと思うんですけど。だからクリエイターが引き出そうとすると摩訶不思議な面白いものが出てくるんです。自分の時間を割いて、そういう教育に向き合ってくれるクリエイターがもっと増えてくれるといいなと思っています。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

タグ:

連載

VISION TO THE FUTURE

ForbesBrandVoice

人気記事