武田:僕たちはそんなに規模が大きいわけではないので、お客様に対して迅速なレスポンスをしたり、比較的小ロットにも対応したりと、そういう戦い方をしています。もうひとつは自分たちでいくつかブランドを抱えて、それを売っていくようなこともしています。例えばニューハッタンというニューヨークのキャップブランドの日本法人として日本でのディストリビューションを任されて商品を作るなどです。
中道:そういう新しい感覚とか流れで衣食住学の4分野に広がっていくわけですね。
武田:他に広がっていったきっかけは、横山町の問屋街にある6階建ての住居付きオフィスでした。6階が住居になっていて、5階まで店舗だったのですが、OEMが増えるにつれ店舗部分が縮小して空きができたんです。そこで空いたところに次につながるようなクリエイティビティのあるものを入れようと考えました。
最初に誘致したのが「coconogacco(ここのがっこう)」というファッションスクールで、日本で唯一、世界的なコンテストにバンバン人を輩出している、とてもクリエイティビティのある学校なんです。
ファッションのことは全然わからなかったので、「東京・ファッションアワード」みたいなキーワードで検索して見つけて、代表の山縣良和さんに無料でいいので来てもらえませんかと話をしたら、とんとん拍子で決まりました。アクセンチュアでロジカルに生きてきた僕が、初めてその枠から飛び出したクリエイティビティと出会ったという感じでしたね。
中道:クリエイティビティはビジネスにとってものすごく大事だと思うんですけど、アクセンチュアで関わっていたクリエイティビティとファッションスクールのそれはどう違いましたか。
武田:僕の知っていたクリエイティビティは目的を実現するためのものでしたが、ファッションスクールのほうはそもそも目的なんかなくて、「こういうのっていいよね!」みたいな感じで無限にクリエイティビティがわいてくるのですごく衝撃的でした。
中道:そこから他のビジネスへどういう風に広がっていったのですか。
武田:coconogaccoではいろいろな人を講師に呼ぶんです。それで、今まで自分が知らなかった面白い人たちと知り合うことができました。いろんな種類の人たちが集まるようになってきたので、もう1フロア増やしてシェアオフィスをやってみようかとか、そうやってだんだん広がっていきました。
中道:ホテルも経営されていますよね。
武田:ホテルはその次で、本社が持っているホテルが老朽化したのでリノベーションすることになり、やってみないかという話になったんです。どうせやるなら飛びぬけたものにしたいと思ってつくったのがDDD HOTEL(Design Development Destination HOTEL)です。
僕が素敵だと思う旅は、泊るところは気持ちがリラックスできればよくて、そんなにお金はかけない。そのかわりおいしいご飯を食べたり美術館に行ったりするのにお金をかける。そういう旅です。ですからDDD HOTELは1万5000円前後の単価にしています。
中道:だからプロフィールにビジネスホテルと書いてあるんですね。でも、すごくコンセプチャルで綺麗なホテルですよね。ホテルの1階がレストランとギャラリーになっているんですね。