今回は、医師でありスタートアップ投資家である中安杏奈さんによる「医師 × VCが見るヘルスケアトレンド」コーナーから、7月23日の配信記事を掲載します。
更年期障害は、症状を我慢してやり過ごす女性が多く、実は経済的インパクトもかなり大きい健康障害です。労働生産性低下や離職、医療費負担のコストを合わせるとグローバルで年間10兆円ほどの損失があり、2040年にかけて1.6兆円の市場規模になると試算されています。
ある米国のアンケートでは、40%の女性が更年期で仕事に支障があったと回答。17%が退職していることから労働生産性には大きなマイナスであることが明らかです。そんななか、日米で数多くのスタートアップが出現し始めています。
・バイオ系
卵巣機能の改善を目指す創薬ベンチャーOviva Therapeutics(米・2021年創業)、iPSから卵子を作成するDioseve(日・2021年)
・デジタルヘルス系
個別化された症状マネジメント、治療アプリMidday(米・2022年)、更年期女性の健康支援も含めた福利厚生プラットフォームnanoni(日・2020年)
・ウェアラブル系
温度感覚に働きかけることでホットフラッシュを緩和する腕時計型デバイスEmbr Labs(米・2014年)
資金調達額で見ると、フェムテック全体は2021年に$1.9B(約2660億円)で、そのうち更年期関連は$10.2M(約14億円)。かなり少ない額ですが、今年は上期だけで$25M(35億円)と急上昇中。女性セレブやイグジット済みの起業家などエンジェル投資家による支援も多く、徐々に注目を浴びてきています。
今後はイグジットの成功例を作っていくことや、保険者・雇用主が支払えるようなモデルを確立していくことが求められます。
また、更年期特化スタートアップだけでなく、女性の健康総合プラットフォーム(米MavenやCarrot等)が更年期サービスを拡大する動きもあり、どちらが勝つかというのも論点です。圧倒的なプロダクトを開発した新興プレイヤー、あるいはB2B顧客チャネルを握っている既存プラットフォーム両方に引き続き注目していきたいところです。
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