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2023.07.31

「CO2回収」の米スタートアップAvnosが石油大手から8000万ドル調達

DimaBerlin / Shutterstock.com

CO2回収を手掛ける「Avnos」の環境ソリューションは、一石二鳥の効果が期待できる。それは、大気からCO2を吸い上げ、その副産物として水を生成するというものだ。同社は7月13日、ステルスモードを脱し、石油大手のコノコフィリップスとシェル・ベンチャーズのほか、航空会社のジェットブルーが設立したジェットブルー・ベンチャーズから8000万ドル(約113億円)以上を調達したことを明らかにした。

ロサンゼルスに本拠を置くAvnosは、2025年までに同社の独自システム「ハイブリッド・ダイレクト・エア・キャプチャー(HDAC)」の商業運転を開始する予定だ。20フィートコンテナほどの大きさのモジュールで構成されたこのシステムは、周囲の空気を吸い上げてフィルターに通して水を生成する。同社のCEOのウィル・カインは、除湿機と同じように生成した凝縮水をポンプで汲み上げて貯蔵すると、CO2がタンクに流れ込む仕組みだと説明する。

彼によると、CO2を1トン回収するたびに、5トンの水を生成するという。このシステムのパイロット版は、今年後半にカリフォルニア州ベーカーズフィールドでオープンする予定だ。

今回のラウンドに参加した事業会社からの支援には、資金提供に加えて複数年にわたるシステムの導入が含まれる。システムを使って生成した水は収益を生むことが期待でき、回収されたCO2は、コノコフィリップスとシェルが合成燃料を製造する際の原材料に使うことができる。

今年の記録的な猛暑や、かつてないほどの猛烈な嵐と干ばつで、地球の温暖化は疑う余地がなくなっている。こうした状況に歯止めをかけるためには、化石燃料からの脱却に加えて、大気や海洋に蓄積された膨大な量のCO2を削減することが必要だ。Avnos以外にも、「Climeworks」や「Charm Industrial」、ロサンゼルス本拠でAvnosのライバルである「Equatic」などの企業が、それぞれ異なるアプローチでCO2の直接回収に取り組んでいる。

これらの企業に共通しているのは、カーボンクレジットを販売することに加え、CO2排出量を正確に測定できることを約束している点だ。初期にカーボンオフセット商品を販売していた企業の中には、植林を約束しながら実際の活動は不透明といった、いわゆるグリーンウォッシング(虚偽の環境への配慮を謳う行為)が懸念されており、CO2排出量を測定できることは重要な意味を持つ。
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編集=上田裕資

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