食&酒

2023.08.06 08:30

誰もが働ける場をつくる。熊本発アイスクリームブランドの挑戦

成長のキーワードは「脱ビジネス思考」

ウッドベースで温かな印象の店舗は、小石製作所が設計製造を担当した。撮影 / 伊藤写真事務所

ウッドベースで温かな印象の店舗は、小石製作所が設計製造を担当した。撮影 / 伊藤写真事務所


立ち上げからおよそ2年が過ぎた2023年5月、オンラインのみでの販売を経て、山都町に念願の実店舗をオープンした。卸販売に加えてメディア露出やコラボレーションも増え、認知が広がるスピードは想定していた以上だった。成長の鍵はどこにあるのだろうか。

「立ち上げた当初は今まで学んできた経営学をフル活用するぞ!なんて意気込んでいたんですが、実際に運営をしてみると、多くの人を巻き込んで成長していくために必要なのは、脱ビジネス的な思考だということに気づきました。経営学のフォーマットにはめて考えてしまうと、関わる人たちの表情や想いを見落としてしまいます。そこを一旦捨てて、ナチュラルに関わってみたことが今回の成長の鍵になったと感じます」

体に染み込ませてきた経営フォーマットを捨てられたのは、共同代表である兄・郁弥氏の存在も大きい。郁弥氏が働く東京のコーヒーショップ「PADDLERS COFFEE(パドラーズコーヒー)」のカルチャーやコミュニティが、大きなインスピレーションを与えてくれた。

「PADDLERS COFFEEは独自のカルチャーを形成しています。経営学で学ぶファクトとロジックではない、“この製品ってなんかいいよね、あったかいよね”というような感覚的な部分をみんな大切にしていて。その方が人を惹きつけるんです。もちろん根底にはクールヘッド(冷静な頭脳)が必要だと思いますが、実装においては感覚的なアプローチが大切だと学びました」

左上から時計回りに、通潤酒造、熊本県立矢部高校、料理家たかはしよしこ氏×ADIEUTRISTESSE(2種類)、PADDLERS COFFEE、THOUSとのコラボレーション。

左上から時計回りに、通潤酒造、熊本県立矢部高校、料理家たかはしよしこ氏×ADIEUTRISTESSE(2種類)、PADDLERS COFFEE、THOUSとのコラボレーション。


その考えをもとに、自ら営業活動はしないと決めている。卸販売に関しても、対話を重ね、カルチャーフィットを確認した上で、慎重に判断する。来る依頼数に対して、実際に卸す店舗は3分の1ほどだ。結果、コラボレーションは10件を超え、売上は初年比約10倍、その後は約1.5倍ペースで伸びていくこととなった。

成長することで課題解決の速度を上げる

昨今は敢えて拡大をしないことを選び、それをブランディングとして利用するブランドも多い。しかし吉山氏は迷いなく、継続的な成長には拡大が必要だと語る。
次ページ > キーワードは「継続」と「成長」

文=佐藤祥子

ForbesBrandVoice

人気記事