そして辿り着いたのが、アイスクリームだった。
「小さいころ、祖母が手づくりのアイスクリームをつくってくれていて、それが大好きだったんです。山都町は有機農法の農家が多く、ほとんどの方がJA(農業協同組合)に出荷しているんですが、基準に満たない規格外の野菜は廃棄されてしまう。そんな廃棄野菜を余すことなく活用できて、全国に届けられて地域を盛り上げられる、さらに自分もみんなも大好きなもの・・・それがアイスクリームだったんです」
地道な対話で仲間を増やしていく
現在、ブランコアイスクリームの原材料は山都町で生産されたものが、7〜8割を占める。吉山氏が生産者のもとへ一軒一軒足を運び、対話を重ねて仕入れたものだ。高齢かつ小規模農業を行う生産者が多い中、立ち上がったばかりの若手アイスクリームブランドに協力してもらうことは、決して簡単なことではなかった。
「“裏庭に梅が余っていて勿体無いから持っていって”なんて言われて、それを仕入れさせていただくこともあります」
草刈りを手伝ったりしながら、時間をかけてたくさん話をして、信頼関係を構築していく。ときには町の集会に出向いて、そこで新たな出会いや繋がりをつくることもある。
「過疎化や少子高齢化など、どの地方でも同じように抱える課題はあると思いますが、その原因は決して一律ではなく、データを見るだけでは本当のことは分からない。だから僕は、その町の現状や生産者がどんな想いを抱えているのかを実際に見聞きしたいんです。足を運んで対話することで、データに残らない、匂いみたいなものを感じ取るようにしています」
これまでに取引してきた山都町の生産者は約15人。新フレーバーの開発を常に行なっているため、今後さらに地元の取引先を増やしていきたいと語る。同ブランドが、山都町の生産者のプラットフォームのようになる日も近いだろう。