介護サービスのDXは待ったなしの日本の現状
TYCはなぜ北米からではなく、日本市場から先行するかたちで同社初のコンシューマ向け製品であるPOMを発売することを決めたのだろうか。コーク氏は背景に「2つの理由がある」と答えた。「1つはTYCが確立を目指す、高齢者の方々やその家族に安心を提供するためのサービスが、現在の日本の社会から強く求められていると考えたからです。日本では現在高齢者の人口比率が高まる一方で、介護サービスを提供できる職員の数が不足しており、そのギャップがこれからも広がると言われています。その一方で自身の高齢期を自宅で過ごしたいと強く望む高齢者の割合も多く、1人暮らし、または夫婦で暮らす高齢の方が負担なく利用できる見守りサービスが期待されています」
「また、日本は世界各地域に比べて介護現場にもIoTのテクノロジーやロボティクスを積極的に導入しています。シリコンバレー発の最先端IoTテクノロジーを活かした、TYCによるBtoB向けの介護サービスが日本の方々に抵抗なく受け入れていただけたことも、POMの日本先行導入を決めた理由の1つです」
POMは縦横約9.6cm、厚さが約4.2cmのポケットサイズのデバイスだ。壁などに設置して、付属するアダプターにより給電する。iOS/Androidに対応する専用アプリに接続して初期設定を行うと、常時ミリ波レーダーを発出しながら室内にいる人物の場所や動作のデータを取得する。
POMが離れて暮らす家族の生活を見守る。宅内複数の部屋にPOMを1台ずつ設置して、それぞれの情報を1台のスマホに入れたアプリで見守ることもできる
TYCでは、これまでに協力を得た高齢者のモーションデータをもとに、独自に機械学習をベースにしたアルゴリズムも開発した。ミリ波レーダーの特徴を活かしながら、就寝中は心拍数や呼吸数など細かな動作を正確にモニタリングできる。その精度は一般の心電図に対する平均絶対誤差率が6.36%におよぶほどであり、つまりは「ほぼ誤差がないレベル」なのだという。
さらに見守り対象者が室内で一定時間動かない、睡眠時間が極端に短い、昼寝してから90分以上が経過する日が続いているなど「行動の変化」が生じたことを判定した場合はアプリにアラートを送り「もしもや万一」を防ぐ機能もある。製品名のPOMは、英語で「安心」を意味する「Peace Of Mind」という言葉の頭文字にちなんでいる。