経営・戦略

2023.08.04 07:30

評価額84億ドルのスーパーアプリ候補生。節約で成長した配車アプリ「ボルト」

強引な戦略でタクシー会社や政府の反発に直面したウーバーとは異なり、ボルトはソフトなアプローチで市場を拡大していった。しかし、規模が大きくなった今、同社もウーバーが直面したのと同じ課題に直面している。地元のエストニアでボルトは最大級の雇用者として歓迎されているが、より厳しい規制がある国々では賃金や労働条件に関する抗議や、安全性に対する懸念が出ている。

それでもヴィリグは、会社の方向性を変えようとは思っていない。もちろん、自分の生きかたも、である。「買収の申し出は今までにもあったけれど、仮に会社を売却するようなことがあっても、2週間だけ休暇をとったら、ライアンエアーで帰国して、また次の事業を始めるつもりだけ」と彼は語る。

「何かを作り続けるだけの時間が、私にはまだこの先、数十年もあるのですから」


Bolt◎2013年創業、北欧エストニアに本社を置く配車アプリ開発企業。共同創業者兼CEOはマーカス・ヴィリグ。前身の「Taxify(タクシファイ)」から発展し、現在は40カ国以上で配車のほか、マイクロモビリティ事業(eバイク、eスクーター)やデリバリーサービスも展開している。22年1月に、84億ドルの評価額を受けている。

Markus Villig◎配車アプリ「Bolt(ボルト)」共同創業者兼CEO(左ページ写真)。19歳のとき、自身にとって2社目となるスタートアップ「Taxify(タクシファイ)」を創業。後に社名をボルトに変更した。16歳で最初の起業となるエドテック(教育)企業を立ち上げたこともあり、「運転を学ぶ時間も、その必要性もなかった」と明かす。

Last One Mile◎ボルトは、欧州やアフリカなど、米国や中国の競合が進出できていない市場で配車アプリの認知度を高めながら、デリバリーやマイクロモビリティで事業を多角化してきた。デリバリーはコロナ禍で人気を博し、eバイクやeスクーターは欧州の道路事情に合うなど、バランスの取れた戦略が奏功している。eバイクや宅配のノウハウを組み合わせれば、物流で他社に優位に立つことも可能だ。

文=イアン・マーティン 編集=上田裕資

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