アート

2023.07.31 17:00

マイノリティの優遇と逆差別。知的障害者の目にはどう写るのか│松田崇弥x堤大介

岩手県花巻市のるんびにぃ美術館を訪問するヘラルボニー創業者の松田崇弥(中央左奥)と松田文登

そのカフェにいた時、障害のあるスタッフがお会計を間違ったようで、私の前に並んでいたお客さんからクレームが入りました。そしたらそのスタッフは「ボス! ボス!」と健常者の責任者を呼んで、そのクレームを一緒にクリアしました。その瞬間、そのスタッフとボスはハイタッチしたんですよ。普通に考えると、クレームの処理が成功したからとハイタッチはしないですよね。でもそれがすごくカッコいいなと思いました。
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世界には、こんなに進んだマインドの国もあるのか、と希望が持てたんです。ヘラルボニーも来年以降海外への進出に挑戦したいと考えています。

堤:僕は近年、2つの大きな波があるなと感じています。

1つは、ソーシャルメディアという波。自分が欲しい情報とつながりやすくなりましたし、自分の考えを発言できる巨大なプラットフォームもあります。その結果、予期できなかったほど個人の力が強くなり、例えば宣伝していなかった作品が口コミで爆発的に売れたり、逆に売れると思われていたものが全然売れなかったりすることが増えました。
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もう1つは、その大きくなる個人の力を押し止めようとする力です。押し止めようとしているのは、政府であったり、一極化して巨大な力を持った企業や、巨額の富を築いた個人であったり。独裁者は市民が賢くなるのを嫌います。あまり物事を考えない人の方が統率しやすいですからね。

この大きな対極する2つの動きのなかで僕らは次世代にどんなことを伝えていくのか。「伝える」というより、こういう変化に対応しきれていない僕たち大人が、変化を当たり前のこととして捉えている若い人たちと会話することが大事なのかもしれませんね。

それこそ障害のある人が自分のパッション1点に集中する力”というのは、アートに限らず実は大きな武器になるのかもしれません。僕も置いていかれないように好奇心を切らさず、ヘラルボニーさんのような活動をしてる人達をとことん応援したい、関わりたいと思っています。

文=久野照美 聞き手=山本智之 編集=田中友梨

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