IBMを経てインドで企業
中ノ瀬は、10年前までロボット工学や宇宙とは無縁の生活を送っていた。2009年には、日本IBMのITコンサルタントとして、顧客の古いシステムをドイツのソフトウェア会社であるSAPの製品に入れ替える仕事をしていた。しかし、大企業の会社員には向いていないと感じ、別のキャリアを探すようになった。2013年にインドに移住し、CloudLancer India, Pvt, Ltdという会社を立ち上げた。同社は、ウェブシステムの受託開発と、マーケティングや教育向けのアプリの開発という2つの事業を展開していたが、2015年、インド企業に事業を売却(金額は非公開)。中ノ瀬はその後、ロボットへの情熱を追求するために東京に戻った。
より安価なロボットシステムを開発して宇宙での組立作業やメンテナンスを支援することを目指し、2016年にGITAIを設立した。社名は、中ノ瀬が好きなアニメ映画『攻殻機動隊』でサイボーグを指して使われていた「義体」に由来している。
同社は2021年、国際宇宙ステーション(ISS)内で自律ロボットによる月探査や組立作業、宇宙船修理の技術実証に成功したと発表した。2024年にはISS船外での技術実証を行う他、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)やトヨタ自動車などとのミッションも予定している。
同社は5月のシリーズB延長ラウンドで40億円を調達しており、カリフォルニア州トーランスに開設した拠点の製造能力を増強する計画だ。中ノ瀬によると、将来的に最も重要なプロジェクトは、宇宙でソーラーパネルや通信アンテナ、居住モジュール、発電機を組み立てるロボットを開発し、月面に数千台規模のロボットを送り込むことだという。
「数千台のロボットを月と火星に送り込み、ソーラーパネルや通信アンテナ、居住モジュール、発電機を組立てる計画です。これは、われわれにとって短期的に最も重要なプロジェクトになります」と中ノ瀬は語った。
(forbes.com 原文)