山井:キャンプにもいろいろなスタイルがあって、東日本では割と電源は使わず、西日本では電源サイトで電気カーペットを使うような方々もいらっしゃいます。15年くらい前までは、せいぜい湯たんぽを取り入れるくらいでしたが、今は冬の東日本では、シェルターの中にストーブを入れて暖かく過ごしているようです。時代とともに、キャンプのスタイルも随分と変わってきていると思いますね。
包行:キャニコムでもジェネレーター付きの機械を作ったことがあって、スモール・ジャイアンツアワードで紹介した「伝導よしみ」なんですけど。あれは元々電源が必要なキャンプ用品の運搬機として作ったんですよ。
山井:そうなんですか、知らなかった。
包行:最初はまるで売れなかったんですよ。でも、東日本大震災の時にちょっとだけ売れて、あとは結局、アメリカのトウモロコシ畑で一番売れたという。元々は、キャンプ場に持っていける機材を全部持っていき、その運搬ができる上にキャンプ場で電源となる機械として売り出したんです。
山井社長が「負けたな」と思ったこと
山井:正直、僕はブランディングで「この人に負けたな」と思うことはないんですけど、農機を買うお客さまとのコミュニケーションの仕方が、笑いも含めてすごく洗練されていますよね。これについては「めっちゃ負けてるやん」と思っているんです。逆にすごく聞いてみたかったんですが、海外はどうなんですか。日本と同じようにコミュニケーションとして笑いを取り入れビジネス展開をなさっているのか、海外では割と真面目にやっているのか。
包行:半々ですね。アメリカは私が直轄の地域だったんで、とりあえず楽しいことやろうと思っているんですね。進出当初「ヒラリー」や「ブッシュカッタージョージ」という名前の機械があり、物議を醸しましたね。その時にちょうどヒラリー対ブッシュの選挙戦で結構センシティブなことをやっていたんですけど、まあすごく怒られました。
私は英語がそんなに上手じゃないので、2枚舌でいきました(笑) 「ブッシュカッタージョージ」では、ブッシュ派の方には「カッター(=勝った)イズビクトリー」だと言って。
海外の営業先に「立ち乗りひろしです」というマルチ電動カートを持っていった時は、「これはどういう意味だ」と聞かれたので 「アズ ブラッド・ピット」と言ったり。なんだかんだ、私はアメリカに来て19年たつのですが、お前だから仕方ないというようなところに行き着きました。
山井:キャニコムのビジネス展開はグローバルでやった方がいいなと思っていて。そういったブランディングって普通なかなか成立しないのですが、包行さんのキャラクターもあって成立していますよね。
農業機械の中でも機能の差がいろいろあると思うんですが、「精神的価値」の方が、買う人にとっても、農作業をやる人にとっても魅力的なのかなと感じます。その精神的価値を買ってくださる方が、どんどん増えていくような気がしていて、その領域では圧倒的にキャニコムさんが勝ちそうだなと思っているんですよ。