中国が唯一最大の石炭消費国であることに変わりはないが、先進国も2020年以降、逆行している。特に欧米では2020年以前、石炭消費を大幅に削減していた。ところが米国では2021年に、欧州では2021~22年に石炭需要が回復。この傾向は今年になっても続いている。その主な原因は欧州のエネルギー危機だ。ロシア産天然ガス供給の減少を補うための緊急措置として、欧州諸国は石炭火力発電所の段階的廃止を遅らせ、石炭消費を増やしたのだ。
何年も低迷していた米国の石炭企業は、需要の回復とともに急成長した。ピーボディ・エナジーは2020年11月に1株当たり1.05ドルの安値をつけたが、現在は22ドル前後で推移している。アーチ・リソーシズの利益は2021年第2四半期から翌年同四半期にかけて12倍に拡大し、それを受けて株価は4倍になった。
このように、温室効果ガスの排出量を世界的に削減する必要があるにもかかわらず、石炭の消費量は増加し続けているため、市場は石炭の生産を継続するよう奨励されているのだ。
中国が石炭の大半を消費し、同国政府が石炭火力発電所の新設を承認し続けている現状では、温室効果ガスの排出量をすぐに大幅に削減できる見通しを楽観視することは難しい。
結論として、世界的な石炭消費削減の課題は重要だが、それはやがて、世界的な石油消費削減というさらに大きな課題の影に隠れてしまう可能性がある。石炭に代わる実行可能な代替手段はあるが、石油に代わる燃料に関しては経済的な案が少ないため、はるかに困難なのだ。私たちが下す決断は、最終的には変化のシグナルに左右されることになるが、そのシグナルは現在、価格と入手可能性に支配されている。
(forbes.com 原文)