全米トップの進学実績 「スタンフォードオンライン高校」躍進の秘密

Stanford OHS HPより

なぜスタンフォード大学から優れた起業家が生まれるのか──。
 
本連載では、今年4月まで現地で1年間スタートアップ・エコシステム調査を行ってきた芦澤美智子が、その内部の実態を探りお届けしていきます。
 
今回取り上げるのは、米有名大進学実績で3年連続1位を誇る「スタンフォードオンライン高校(以下、オンライン高校)」。世界43カ国の中1から高3の生徒が、各国からオンラインで学んでいます。2008年にスタンフォード大学哲学博士修了後、オンライン高校のプロジェクトに参画し、2016年から校長を務めている星友啓さんに、お話を伺いました。

スタンフォードが中高生教育を始めた経緯

 ──オンライン高校が始まった経緯を教えてください。
 
ここの前身は、「教育×テクノロジー」研究と、ギフテッド教育です。牽引したのは、パトリック・サップスという著名な先生です。
 
1990年代にCD-ROM郵送による教育が始まり、2000年代には電話による質問サービスが追加されました。これがすごく人気になり、もう一段踏み出そうということで、2006年に「スタンフォードオンライン高校」が設立されました。オンライン教育で有名なコーセラやユデンシティの発足は2010年以降なので、かなり先進的な取り組みでした。
 
スタンフォード自体は大学教育がメインですから、オンラインスクールを中高生対象としてやることは、大変な議論がありました。しかし、スタンフォードでは、新しい分野を切り開いた人が評価されます。また、アカデミアに閉じず、産業界と繋がって資金的な解決をすることが普通に行われています。特に、パトリック先生はいろんな人を巻き込んだり、資金調達に強い人でした。
 
彼の家はスタンフォードの中にあり、プライベートシェフがいて、行くと美味しいものを食べさせてもらえる。私も何度もお家に招待されて議論をしましたが、ある時、「オンライン高校の校長をやらないか」と誘われました。
 
私が、立ち上げメンバーのなかで商売っけのある唯一の人間だったので、校長に誘われたと思っています。私は親の経営する花屋で育ってきたので、組織運営のスキルに長けていました。
 
──大学での全体戦略があってプロジェクトができるというより、個々の研究者がプロジェクトを立てていくということでしょうか。
 
はい。我々は外部の認可を取って活動していますし、研究者主導で始まったプロジェクトなので、独立性が強いです。ちゃんとお金を持ってこられる所には、大学としてあまり介入してこないです。
 
その代わり、私がオンライン高校の校長として最初にやったことは、基金を作り約500万ドル(約5億円)お金を集めることでした。最初の10年ほどは赤字続き。トントンになってきたのは設立10年目ぐらいですね。
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