キャリア・教育

2023.07.21 07:30

全米トップの進学実績 「スタンフォードオンライン高校」躍進の秘密

オンライン高校で重視すること

──オンライン高校の躍進はなぜ起こったのでしょうか。
 
相手は思春期の中高生です。オンライン教育で社会性や感情のコントロールができるのかが課題とされていました。最初はそのことをあまり重視していなかったのですが、これは本質的な問題だと思い、社会性や感情をちゃんと育成しなければと考え取り組みました。
 
普通の学校だと、だいたい生徒に一人、心の面のカウンセラーを置きます。それに加えて私たちは、進路面のカウンセラーも付けました。相性もあるのでカウンセラーを複数体制としました。コミュニティ形成については、社会心理学とか専門家と相談しながら作っていきました。合宿をしたり、対面で2〜3カ月に一回の頻度で大きなイベントをやっています。そうした地道な努力が熟成してきたのが、10年目くらいです。
 
それと、外部環境としてもオンラインを支える技術が発展しました。オンラインで教育することに対する、社会の理解が深まっていったことも、オンライン高校の躍進の背景としてありました。
 
── 一般的に学校というところは、やるべきことがすでにあり、新しいことをやる余裕やインセンティブはないように思います。
 
いや、むしろ切羽詰まって新しいことをやらなきゃいけないという感じでずっとやってきています。もともと我々自身がスタートアップのような存在ですから、起業家精神のある人が集まっています。
 
途中で生徒数増加を止めたら、周りが「あれ、学校規模が一緒だね。変化がないとつまんないね、星くん」という見方になってくる。
 
──イノベーションはオンライン高校の文化なのでしょうか。
 
スタンフォード大学全体の文化じゃないでしょうか。全体的に本当に自立性を尊重しており、先生たちが「やらされてること」が少ないです。みんな自分の専門の延長線上でやりたいことがありますから、それを尊重しているわけです。それから黙認文化でもある。「やるんだったらやってよい。だめなら潰れるだろう」という雰囲気です。
 
でも分散化のデメリットもありまして、パンデミックの時に方針がなかなか決まらなくて大変でしたよ。
 
──オンライン高校として起業家教育にどのように取り組んでいますか。
 
起業家教育とリーダーシップ教育の大きく2つのコースが置かれています。どちらか1つは履修しないと卒業できません。
 
起業家教育では例えば先日、国際的に活動しているバイクレーシングチームを率いる、MIEレーシング代表取締役の森脇緑さんと、スポーツメディア「HERO X」創業者である、RDS代表取締役の杉原行里(あんり)さんに授業に来てもらいました。お二人からモーターレーシングやモビリティのことを話してもらい、その後、ビジネステンプレートを提示し、ビジネスモデルを募集しました。さらに、彼ら2人が選んだプロジェクトをサポートしてもらう、というプログラムをやりました。
 
リーダーシップ教育もアントレプレナーシップ寄りです。起業家にインタビューして、どういうリーダーシップスタイルでチームを率いているかについてディスカッションをします。
 
それから、スタンフォード発祥の、世界的に有名な「デザイン思考」を使って、生徒たちがライフデザインして行く授業もやっています。
 
──日本では起業家教育っていうのは、最近でこそ見られるようになってきましたが「カネもうけを学校で教えるのか?」といったネガティブな雰囲気もいまだ色濃いように思っています。
 
起業家教育は必須だと思っていて、社会的インパクトを考えるにあたって必ずなきゃいけないものです。その考えは、最初からずっとあります。
 
今、オンライン高校に来てくれてる子たちは、トップ校を受けて全部合格するような子ばかりです。そんな子たちに選ばれる理由は、オンライン高校が既存の環境を壊した学校であること。そして、スタンフォードは起業家精神、起業家教育の世界一の拠点であるわけで、オンライン高校にも起業家教育が求められていると考えています。
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