キャリア・教育

2023.07.21 07:30

全米トップの進学実績 「スタンフォードオンライン高校」躍進の秘密

教授にも浸透する、スタンフォードの起業家精神

 ──スタンフォードが起業家を生み出す理由について、どう考えますか。
 
多様性の中から、いろんな人たちのいろんな能力や文化的バックランウンドがイノベーションを生む。そしてその中にはソーシャルインパクトを出すもの、企業価値が大きくなるものが生まれてくる。
 
今オンライン高校には、世界43カ国から生徒が来ています。アメリカでも49州から来ている。場所も文化も違う人たちが集まっています。やってみるまで実感できなかったのですが、生徒たちが違う場所に住んでいると、そこから生まれる議論やアイデアのインパクトっていうのはものすごく大きいんですよね。
 
生徒たちは自分のクラスメイトが何気なくしゃべってるなかで、私の国ではこういう風になっているとか、どうやら報道の仕方全然違うね、みたいなことを、ライブで友達から聞くわけです。
 
そこから新しいアイデアが生まれたり、違いのなかから「自分はこれをやっていきたい」という起業家精神が育つのだろうと思っています。
 
私がスタンフォードに来て感じたこととして、日本よりも、研究や学問が創造の喜びに繋がっている気がします。
 
日本だと知識と生活があまりにも離れているので、「あいつ勉強できるけど馬鹿だよね」みたいな会話が成り立つのです。「アンチ知識人」みたいなところもちょっとあったりして。
 
一方で、「アメリカンプラグマティズム」という言葉があります。プラグマティックは実用主義と訳されますが、本質的にはちょっと違う。「知識よりもその心の内から湧いてくる関心が実用に向いていることが大事で、そこに根付いた学問としてやっていきましょう」という話なんです。
 
職業学問になってしまうと、その分野で築き上げられた前提の外に出られない。学者が競って専門分野のなかでしか通用しない言葉をわざと作って、ポジション取りに夢中になってしまうと、学問が実用から離れてしまう。
 
スタンフォードの先生は、アメリカンプラグマティズムを貫いている人が多い。その理由は、それぞれの分野の権威であることが大きいのかなと思っています。もともと自分で分野を開拓した人が多くて、その分野を誰も理解してくれくれなくて苦労した経験がある。そんな経験があるから、新しい分野を開拓しようとする人に寄り添えるんです。
 
つまり、スタンフォードは、先生たち自身にも起業家精神が貫かれているんですよね。

取材後記

スタンフォードオンライン高校は全米でもトップの進学実績を誇る高校として有名です。星校長のお話からは、「先生やスタッフに起業家精神が貫いている様子」が伝わってきました。
 
よく考えたら当たり前に思える事実ですが、これに改めて気づかされました。そして、そんな先生やスタッフの活躍を見守る、スタンフォードの教育機関としての在り方から、日本の大学に関わる者として、大きな刺激と学びを得ました。
 
星校長はまた以下のようなことを語っておられました。「日本のコンテンツ力、キャラクターやゲームには素晴らしいものがあります。同時に教科書の質も高い。教科書など学習教材にそのコンテンツを活かし、アメリカとかアジアに展開して行く可能性があるんじゃないか」
 
星校長の「教育者×起業家」としての活躍が期待されます。


星友啓(ほし・ともひろ)◎スタンフォードオンライン高校校長 哲学博士。2008年スタンフォード大学哲学博士修了。2016年よりスタンフォードオンライン高校校長。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて、教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。 2000年東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。 2001年より渡米、2002年Texas A&M大学哲学修士修了。

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