経営・戦略

2023.07.26 07:00

味の素が国内外のスタートアップと連携する「真の狙い」

──20年12月に、R&B企画部内にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を設置した。23年3月時点で、培養肉スタートアップの「スーパーミート」や「坂ノ途中」など7社に出資している。出資するかどうかを見極める際の「条件」はあるか。

私は研究・事業開発からCVC、ジョイントベンチャー、M&Aまで一気通貫で戦略をみている。そのため国内外のさまざまなスタートアップと話をするが、最も重視するのはCEOの志の高さと、どのような社会課題の解決に取り組んでいるのかという点だ。彼らがもつ技術やサービス、事業内容と当社との親和性も評価軸のひとつではあるが、最終的には志をともにできるかどうかに尽きる。規模の大小は関係ない。

価値を共創できると判断すれば、まずは資金面から成長をドライブできるようにサポートする。さらに、切り出したほうが成長を加速できると思えばジョイントベンチャーを検討するし、お互いにとってWin-WinであればM&Aという手段を選ぶこともある。

とはいえ、資金をもっているほうが上だ、といった関係性は好ましくない。重要なのは、エコシステムのなかに位置するパートナーとして、互いがどのようにつながり合い、社会価値を共創していくことができるかどうかだ。

──CIOとして、いま注目している技術は。

仮想空間のなかでさまざまな物事を検証できるデジタルツインの技術には、大きな可能性を感じる。例えば、心と体のデジタルツインを生成し、仮想空間上で疾病を予防したり、健康寿命を延伸したりする方法を研究開発し、食事やライフスタイルを通じて健康で幸福な暮らしや社会を実現できないかを検討したい。このような世界をつくる方策を見いだすことができれば、人と社会のウェルビーイングに貢献できると考えている。
白神 浩◎味の素代表執行役副社長、Chief Innovation Officer、研究開発統括。研究所にて医薬品のプロセス開発に携わり、新規事業開発や人事、ライセンスなどの部門を経験。ベルギーや米サンディエゴ駐在経験ももつ。バイオ・ファイン研究所所長を務めた後、22年4月より現職。工学博士。

白神 浩◎味の素代表執行役副社長、Chief Innovation Officer、研究開発統括。研究所にて医薬品のプロセス開発に携わり、新規事業開発や人事、ライセンスなどの部門を経験。ベルギーや米サンディエゴ駐在経験ももつ。バイオ・ファイン研究所所長を務めた後、22年4月より現職。工学博士。

文=瀬戸久美子

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事