起業家

2023.06.30 17:30

食品ロス削減ECのクラダシが上場 「社会的事業」を成立させる条件

代表取締役社長の関藤竜也と取締役執行役員CEOの河村晃平(撮影=曽川拓哉)

IPO(新規株式公開)を果たした起業家たちは、どのようなターニングポイントを経て、事業を成長させてきたのか。本連載では、上場を果たすまでの「飛躍」の出来事と起業家たちの意思決定のプロセスに迫る。
 
今回話を聞いたのは、2023年6月30日に東証グロース市場に上場した「クラダシ」の創業者で代表取締役社長の関藤竜也(せきとう・たつや)と取締役執行役員CEOの河村晃平(かわむら・こうへい)。
 
2014年創業の同社は、食品流通の商習慣「3分の1ルール」*で廃棄される予定や、規格外などの商品を買い取り、通常より安価でECサイトで販売。売り上げの一部は、社会貢献団体や同社の社会貢献活動のために自ら創設した「クラダシ基金」などへ寄付されており、総額は1億円に到達した。
 
累計会員数は約46万(今年3月時点)、パートナー企業数は1300社を超えている。2022年6月期の売上高は20億7300万円。また、同社は社会・環境に配慮した企業への国際的な認証制度「Bコープ」取得企業として、日本初の上場となる。

オフィスに並ぶ食品

オフィスに並ぶ食品


上場初値は800円。5月に発表した四半期決算では、2023年6月期(予想)の売上高は30億400万円(前期比44.9%増)、純利益はマイナス1億7000万円となった。
 
*3分の1ルール:食品の製造日から賞味期限までを3分割し、食品メーカーは製造日から3分の1の時点までに小売店に納入するという商習慣である。期限内に納入できなかったり、売れ残ったりした商品は廃棄される。

ターニングポイント1 被災地で仕組みづくりの重要性を痛感

──起業するまでにどのような背景があったのでしょうか
 
関藤:1995年に起きた阪神淡路大震災で、私も被災しました。現地で支援活動に参加したのですが、そこで感じたのは、何かの犠牲の上に成り立っている支援、いわゆるトレードオフの関係にある支援は、なかなか続かないということです。無償での支援は、活動する人たちの金銭やモチベーションが持続しません。
 
そして、もう一つは、仕組みづくりの重要性です。震災を通して、「一人で多くの人を助けることはできない」ということを痛感しました。
 
世の中を巻き込むようなトレンドを作るには、個人として活動するのではなく、大きな仕組みを作る必要があると思ったんです。
 
その後商社に入り、中国に駐在すると、そこで目の当たりにしたのは、大量生産、大量消費社会の現実です。その裏に隠れる大量廃棄は、いつか大きな社会問題になると感じました。
 
そこでコンサルティング会社を立ち上げ、食品の在庫問題に取り組みました。商社時代、私が最初に配属された鉄鋼事業は、サプライチェーンにリサイクルの仕組みが組み込まれている産業でした。鉄のスクラップを原料に、再び鉄が作られているんです。
 
食品業界にも鉄鋼業のような流通の仕組みを作れないかと考えました。震災で感じた仕組みづくりの重要性、そして商社での業務経験の掛け合わせが、クラダシのアイデアの原点です。
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取材・編集=露原直人 文=尾川真一 撮影=曽川拓哉

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