こうしたかたちの瞑想が効果を発揮する仕組みを解き明かすため、研究チームは、うつ病の病歴を持つセント・アンドリューズ大学の学生50人について、自伝的記憶に関するデータを収集した。参加者はそれぞれキーワードを与えられ、それに対応する自身の個人的体験について、具体的記憶の詳細を記した。
次に、参加者の半数は、自分を思いやる慈愛の瞑想を実施し、残りの半数(対照群)は、不安レベルを低下させる効果があるとされる「デジタル塗り絵」を毎日行った。
すると、実験開始から4週間後、慈愛の瞑想を行った25人の学生は、対象群と比べて、具体的記憶の想起能力が改善していることがわかった。さらに、反芻思考に費やす時間も、対象群より短くなった。一方で、ポジティブな記憶を思い出すことに関しては、両方の群に改善が見られた。
論文の著者はこう記している。「うつ病の寛解状態において、慈愛の瞑想は、自伝的記憶の想起に関する機能改善に貢献し、うつ病につながる認知的脆弱性を減少させる可能性があることがわかった。認知的反応性(ネガティブな出来事に対して否定的な思考に陥りやすい傾向)が誘発された状況において、慈愛の瞑想は、自伝的記憶の影響に対する緩衝材として機能する」
「Increasing autobiographical memory specificity: Using kindness meditation to impact features of memory retrieval(自伝的記憶における具体性を向上させる:慈愛の瞑想を用いて、記憶想起の機能に影響を及ぼす)」と題されたこの論文の論考部分で、研究チームは以下のように書いている。「我々の知見は、寛解状態のうつ病において、自伝的記憶想起の機能を向上させる治療法を開発し、うつ病につながる認知的脆弱性を緩和する上で役立つ可能性がある。この研究では、具体性、感情価(状況に対する好悪の感情)、優位な視点という側面で、相当の改善が認められた」
(forbes.com 原文)